アインクラッド 前編
瞳の奥に潜む影
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った一体に向かって全速力で駆け寄り、片手剣用の単発垂直斬り《バーチカル》を、マサキを見たまま動かない頭に叩きつけた。
再び弱弱しい鳴き声を上げながらHPバーをがくっと五割、先ほどのマサキの攻撃と併せて総HPの七割強を一瞬で削り取られたオオカミに対し、マサキは一瞬だけ哀れむような視線を向けるが、攻撃を受けたオオカミがスタン状態を示すようにふらふらとよろめくのを見て、右手に握っていた柳葉刀を肩に担ぐようにして構えると、足元のおぼつかないオオカミの頭を狙って一気に駆け出し、オレンジ色のライトエフェクトで貫いた。途端にオオカミが苦しげな断末魔を残し、ライトブルーのポリゴン片となって四散する。
マサキは技後硬直が解けるとすぐにトウマと合流した。
「お見事!」
「そっちこそ、ナイスアタック!」
名前に違わない黒塗りの両手剣を体の前で構えた少年からの賞賛を敵から目を離さぬままに返すと、マサキは彼の左側に陣取り、再びオオカミたちと相対した。
次に動いたのはオオカミだった。前衛の一体がマサキを鋭利な爪で引き裂こうと飛びかかり、時間差をつけて後衛が追撃として噛み付こうと走り出す。これが、このオオカミのステータス自体は《はじまりの街》周辺のモンスターと比べてもそこまで高くないにもかかわらず、高めの経験値とコルを取得できる理由。すなわち、モンスター間の連携攻撃である。
このような連携攻撃を見せるモンスターは通常、もっと上の階層に行かないと現れないため、βテスト時は専ら連携攻撃を行うモンスターに対処するための練習台だったが、レベル1の二人に対しては十分な脅威たりえる――はずだった。が、マサキの脳の処理能力を超えるには、この連携はレベルが低すぎた。
マサキは最初に飛び込んで来たオオカミを体を左にずらして避け、その瞬間、それまで右手に握っていた柳葉刀を左手に持ち替えると、柄の先でオオカミの腹を思い切り殴りつけた。
ソードスキルではないため、削り取ったHPは僅かに数ドットだが、オオカミは五メートル先まで吹っ飛ばされる。そしてそのまま視界の隅で二体目を捉え、左下の剣を右上へ、単発斜め斬り技《ライトネス》をカウンターでぶつけ、転がったところをトウマが再び《バーチカル》で攻撃、二体目のHPバーを吹き飛ばした。
こうなってしまえば、敵は数的劣勢の上、お得意の連携攻撃も使用不可能。しかもステータスは低いため、これ以上ない絶好のカモである。マサキたちは特に苦労することもなく三体目のオオカミを倒すことに成功した。
その後も二人は順調に狩りを進めていき、十五体目のオオカミが無数の破片となって飛び散ったとき、草原の耳鳴りがしそうなほどの静寂さとは180度かけ離れた陽気なファンファーレが二人を包んだ。
「何だ、この音は? ……トウマ
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