第124話『引き継ぎ』
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在している。それは、
「あの、1個しかないんですけど……」
「ん? じゃあそれがお前の分ってことだな。ほら、早く食えよ」
ロシアンルーレットには必ずハズレが存在する。そして罰ゲームと称されて西片に渡されたシュークリームは1つ。その中身が何なのかは想像に難くない。だから西片も食べるのを躊躇していたが、ついに決心して口を開ける。
「えい! はむっ」
一口。彼はシュークリームをかじる。その瞬間、彼の顔がみるみる赤くなっていくのがわかった。
「か、辛ぇぇぇ!!!」
やっぱりと言うか何と言うか。ハズレは激辛シュークリームだったようだ。定番と言えば定番だが、いざやると相当苦しいと思う。西片の絶叫が教室に木霊する。
「はっはっは! あ、お前らもやるか?」
「「遠慮します……」」
その叫びに負けないくらい終夜は大きな笑い声を上げ、そして悪魔のゲームを他の人にも勧めてくる。勧めるのはいいが、シュークリームを1つだけしか差し出さないのはやめて欲しい。当然、誰もその誘いを受けなかったのだった。
その後もパーティは団欒とした雰囲気で進み、晴登も伸太郎と他愛ない会話を交わしていた。
「それにしても、お前が部長だなんてな。これからは部長って呼んだ方がいいか?」
「急によそよそしくなるのやめてよ。いつも通りで──」
部長になったことをからかってくる伸太郎。後輩とかならまだしも、同期である彼にそう呼ばれるのはさすがに嫌だ。だからやめるように言おうとしたところで、ふと名案を思いつく。
「いや、これからは『晴登』って名前で呼んでよ、『伸太郎』」
「──何て?」
一拍遅れて彼の素っ頓狂な返事が返ってくる。頭の回転が早い彼でも、今の言葉を理解するのには時間がかかったらしい。
「いや、俺たち同じ部活の仲間なんだしさ、そろそろ名前呼びでもいいかな〜って」
「い、いきなりだな。そんな急に変える必要あるのか?」
「結月のことは既に呼んでるのに?」
「それは区別のために仕方なくであって……あぁわかったわかった、そんな目で見るな! 呼べばいいんだろ呼べば!」
言い訳をする伸太郎に残念そうな表情を向けると、彼はすぐに折れた。まだ短い付き合いだが、彼には頼み込む作戦がよく効くことは既に知っている。これからも利用してやりたいと思う。
そして伸太郎はゆっくりと深呼吸した後、晴登と目を合わせないようにしてから一言、
「その……これからもよろしく。は、は、晴登」
名前呼びに慣れていないのか、恥ずかしそうに晴登の名前を呼んだ伸太郎。普段堂々としている彼がしおらしくなっているのを見ると、何だか口元が緩んでし
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