第八十一話 初等教育開始
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いた事からやむなくこういう措置をとった。
マクシミリアンは悲観せず、
『十年二十年後は平民向けの職業として定着するかもしれない』
と言って、むしろ新たな雇用の誕生を喜んだ。
とはいえ、単純に『雇用』と言ってもその道は厳しい。
何せ、人を教え導く職だ。『人間』が出来上がった人間でないと勤まる仕事ではない、言ってみれば『聖職』である、とマクシミリアンと思っていた。
ろくでもない教師に当たって子供達を不幸にする可能性がある為、振るい掛けは慎重に進めなければならない。
もっともエレオノールをはじめとした、初等学校の教師の面々が人間が出来ているかどうかは、疑問点が付くが……
ともかくトリステイン王国における初等教育はこうしてスタートした。
……
入学式を終えたシエスタ、ジェシカ、ジュリアンの三人は、割り当てられた教室に入った。
百人の入学生を五つに割り、一クラス二十人前後で、三人とも同じクラスだった。
教室内で真っ先に目に付いたのは、生徒三人ほど並んで座れる長椅子と長机が並べられていて、向かい合うように黒板があり、小さな講義室を思わせる教室だった。
教室内で騒いでいる子供たちは皆年齢がバラバラで、口悪く言えば、動物園の猿の檻の中……という言葉がピッタリな状況だった。
そんな中、担任のエレオノールが教室に入ってきた。
「さあ皆さん。席に着きなさい!」
馬術用のムチを片手に、生徒達に席に着くよう命令するが……
『がやがや……』
『きゃいきゃい……』
シエスタ達は席に着いたが、他の子供たちは席に着こうとせずお喋りをして騒いでいた。
「……」
仏頂面のエレオノールが、ぺちぺちとムチで自分の手の平を数回叩くと、
「さっさと席に着きなさい!」
ビシィ!
と、エレオノールはムチで、前列の机を力一杯叩いた。
『ひい……!』
『あわわ……!』
途端に静まる教室。
子供たちは我先に近くの席に座り、大人しくなった。
「……始めまして。私はあなたを卒業まで受け持つヴァリエールです。ヴァリエール先生と呼びなさい」
「……」
エレオノールの自己紹介は、生徒達の畏怖の目で迎えられた。
「これから、貴方達に基礎的な読み書きに計算、その他諸々を教えます」
『……ごくり』
生徒のほぼ全員が生唾を飲み込んだ。
「特に貴方達には、社会での生活能力をみっちり学んで貰いますから覚悟しておきなさい」
『……』
「返事は!?」
『はい!』
シエスタ達を含めた生徒達は、大きく返事をした。
「……何だかとんでもない所に来ちゃったわね」
ジェシカが
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