第六百七十一話 野上君の戻る先その十三
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「大事を目指しても大事になるとは限らぬ」
「小さなことになりますね」
「そうなることがままにしてあるものじゃ」
「もっと大きくもなりますよね」
「その場合もあるが志は大きくなってこそじゃ」
そうであってこそというのだ。
「ことは成るものである」
「だからですね」
「小さなことを考えてじゃ」
悪事を為すにしてもというのだ。
「動くとな」
「小悪党になりますね」
「そして浅ましくなるものじゃ」
小悪党の悪事はというのだ。
「卑しく下劣なな」
「小さな悪事は」
「どうせ自分の下らん利益の為のものでしかないからな」
「そうしたものになりますね」
「だからな」
「小悪党は醜くて」
「餓鬼が為すものなのじゃ、餓鬼になって小悪党になるか」
博士は野上君にさらに話した。
「小悪党だから餓鬼になるか」
「卵が先か鶏が先かですね」
「そうした話になるのう」
「そんな感じになってきましたね」
「まあそれは哲学な話じゃな」
「禅問答に近いかも知れないですね」
「だからそれは話すと延々としたものになるが」
それでもというのだ。
「兎に角わしは小悪党そして餓鬼はじゃ」
「お嫌いですね」
「大きくあれじゃ」
あくまでというのだ。
「人間もな」
「善行も悪行も」
「どちらにしてもな、そうであってこそじゃ」
「何かが出来ますか」
「進歩するのじゃ」
そうもなるというのだ。
「そうなるのじゃ」
「そうですか」
「だからな」
「人間がいるからどうかもですね」
「言わぬしな」
「小悪党は嫌いなんですね」
「そうじゃ、ちなみに小さな善人はな」
そうした者はというと。
「何もせん」
「そうなんですね」
「世の中そうした者がかなり多いが」
「小悪党は実は少数派ですか」
「うむ、それでな」
「小悪党はお嫌いで」
「小さな善人はじゃ」
野上君にあらためて話した。
「慎ましやかでもそこに奇麗なものがあるしな」
「それで、ですか」
「そうした者達が大勢いてな」
そうなっていてというのだ。
「世の中はよくなってな」
「進歩するからですか」
「何もせぬ」
小さな善人、そう言っていい者達にはというのだ。
「一切な」
「そうなんですね」
「左様じゃ、では紫のものも飲んだしな」
ここで紫のワインの二本目を飲み終えた、飲むと決めていたそこまで飲んでそれであらためて言うのだった。
「これからは白を飲むか」
「今度はそちらですか」
「あっさりとな、それで野上君は寝るか」
「歯を磨いてそうします」
「ではな」
「はい、お休みなさい」
こう言ってだった。
野上君は歯を磨いて研究所にある自分の部屋に入った、そしてそのベッドに入ってすぐに眠りに入ったのだった
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ