第三十三章 惑星の意思
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「わあ」
アサキは思わず、感嘆の声をあげていた。
芝生の坂を降りて、公園内の敷地に入り込んで人工樹の茂みを抜けたところ、目の前に池や噴水、様々な遊具類などの眺めが広がっていた。
こんなところにこんなものが、と思わず驚きの声が漏れてしまったのである。
「こりゃあ、まるで遊園地じゃのう」
治奈のいう通り、敷地には様々な遊具が設置されている。
ローラーコースターっぽい、列車やレール。
メリーゴーランドっぽい(ただし馬ではなく、なんだか未知の四足生物)もの。
何故だか、妙にぐにゃぐにゃと歪んだデザインになっている。さすがに、ローラーコースターのレールが歪んでいたら危険なので、そこは通常のようだが。
ぽい、というのは、アサキたちの知るものと色々なズレがあるからだ。
人工惑星が地球から旅立った西暦五千年と、アサキたちの知る仮想世界での西暦二千年、その感覚のズレに起因するものか、それとも別に作り手の思惑があってそこに左右された認識ズレか、そこまでは分からないことだが。
「この人工惑星は、地球の文明を知らしめる役割を兼ねてもいますから。先ほどの居住区と同様、異星人を勝手に想定して、汎用性も持たせた結果、ちょっとズレた感覚になっているのです」
ヴァイス語るには、そういうことのようである。
「こがいなところ訪れておる間に、シュヴァルツたちにサーバを壊されたりはせんのかのう?」
遊具を見回し眺めを楽しみながら、不安にもなったか治奈が尋ねる。
不安になるのも当然というものだろう。
この惑星の内部にある超次元量子コンピュータが作り出す仮想世界は、まだ現存しており、そこには史奈たち、仮想存在の人類がこれまでと変わらぬ生活をしているのだから。
少し前まで自分たちのいた、本物と思っていた世界であり、その世界をシュヴァルツたちは破壊しようとしているのだから。
「ま、大丈夫なんだろ」
言葉を返すのは、茶髪ポニーテールの少女カズミだ。
「あたし、コンピュータとかよく分からないけど。……この惑星全体がコンピュータみたいなものなんだろ? でも、これまで平気だったんだろ?」
「カズミさんの、仰る通りです。地下へはわたし、またはわたしが許可した者しか、行かれません」
白い衣装を着たブロンド髪の少女ヴァイスの、幼い顔ながらやわらかで落ち着いた声。
「であればこそ、あいつらはなにか画策しているわけだけど、でものんびり対策を立てる時間だけはあるってわけだな」
さっすがあたし、とでも思ったかカズミは笑みを浮かべてふふんと鼻を鳴らした。
「いえ、そうもいっていられないのです」
自画自賛も即行で否定されたが。
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