第三十三章 惑星の意思
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「なんでだよ! この栗毛!」
「あなたたちに、『呪縛』『制限』を感じません」
「はあ?」
カズミは、渋皮を口に入れた顔をそのまま横に傾けた。
「転造機により物質化された存在である以上は、権限的には『一般ユーザ』、わたしたち以上に制限があって然るべき。なのに、それを感じない」
「ヘイユー日本語でお願いネ! ……よく分かんねえけど、なんにも出来ないはずのあたしたちが、何故か反対にお前ら以上にやりたい放題やれちゃうってこと?」
カズミの質問に、ヴァイスは小さく頷いた。
栗毛といわれたさらさらのブロンド髪が、微かに揺れた。
「何故か、についてですが、元々が『奇跡』によって作られた存在だからだとわたしは推測します。もちろん、この人工惑星自体の意思がある以上は、破壊を望んだところで容易にはままならない。ですが、試みることは、不可能ではない」
「なるほどな」
手のひら叩くカズミであるが、すぐ顔を真っ赤にして、
「って違うよバカ! あたしらが、ここを破壊しようってのかよ!」
怒気満面、声を荒らげる。
暴風浴びようと、ヴァイスの顔色には微塵の変化も見られないが。
「いえ、そうではなく、あなたたちに呪縛がなくて、破壊行動も可能なのだとしたら……」
「ん? んん? ……あ、ああっ! そ、そうか、至垂のクソが、ってことか!」
「でもっ、でも、この宇宙が『絶対世界』だったんだよ! 考えられない!」
アサキは動揺しつつも、至垂がそうする可能性を否定をする。
至垂徳柳は、アサキと同じ合成生物である。
幼少より、つまり生み出されてからずっと、実験体とされていた。
その恨みを晴らすために、神として人類の上に君臨することを決意したのだ。
どこまでが本心かは分からないが、以前にアサキは本人から直接そう聞いている。
なんと小さなとは思うが、ともかくそれが本心ならば宇宙を滅ぼそうなどとは実におかしな話ではないか。
「そうだよ。あいつは神になって自分SUGEEEEEE!ってセコい力を誇示したいだけなんだから、対象である世界や人類は必要だろ」
「動機付けの話は、どうでもよいのです。大切なのは、呪縛されていない者があなたたち以外にもいるという事実」
ヴァイスは、感情動機論をすっぱり切り捨て、でも完全ドライにもなれないのかちょっと弱々しい表情になって、言葉を続ける。
「だから……悠長に構えても、いられないのです。……とはいえ、わたしは無限に等しい時間の流れを生きてきたから、猶予がないといっても、どう急げばよいか分からない。恥ずかしい話ですが、みなさんのお知恵にすがるしかない」
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