第三章
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「全てな」
「素直にお助けすればよかったのですが」
「悪戯心を起こして申し訳ありません」
「ですがもう妹の痛みは引きましたので」
「もう大丈夫です」
「では食しても美味いか」
李広は姉妹に問うた。
「そうなのか」
「はい、ご安心下さい」
「崑崙の美味な杏子です」
女達が答えるとだった。
杏子の林に無数の杏子が再び実った、女達はその杏子を指示して李広達に話した。
「どうぞお食べ下さい」
「甘く食べるところが多いです」
「渇きだけでなく餓えも癒されます」
「そうなります」
「そして接ぎ木をすればです」
「他の場所でも実りますので」
「わかった、では馳走になってだ」
李広は女達に答えた、杏子の仙女であることが明らかな彼女達に。
「然るべき地にな」
「接ぎ木をされますか」
「そうされますか」
「その様にする」
このことを約束もしてだった。
李広は兵達と共に杏子の実を食べた、その実は実に甘く美味く食べる部分も多くだった。
彼等は食べて渇きだけでなく餓えも癒した、それを見届けてだった。
女達は李広と兵達に深々と頭を下げて姿を消した、そうして彼は次の日たまたま出会った旅の商人からこの地が敦煌からほど近いと聞いてだった。
敦煌に向かい街に入った、そして街の役人に杏子のこととその林の場所のことを伝えた。
「接ぎ木をしてだ」
「植えるとですね」
「実に美味い実がなるからな」
杏子のそれがというのだ。
「是非だ」
「接ぎ木をすることですね」
「そうだ、いいな」
「わかりました」
役人は李広の言葉に頷いた。
そうしてその場に行って杏子の木を取ってだった。
敦煌に接ぎ木をして植えていった、すると実際にその実は実に美味く。
「全ては李将軍の賜物だ」
「将軍がおられてこそこんな美味いものが食える」
「将軍のお陰だ」
「将軍あってこそだ」
こう口々に言ってだった。
李広を讃え杏子を李広杏子とさえ名付けた、その杏子は今も敦煌にあるが。
種から育てると苦くて食べられず接ぎ木で植えると美味い。そして敦煌以外の地では味が変わるという、それも李広からのことであるという。彼と杏子の仙女達のことは今も尚残っているのであろうか。
李広杏子 完
2022・4・13
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