小さな意志
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いた浅間ではなく
何時も、声を掠らせ、たどたどしく喋っていた鈴であった。
その小柄な体のどこからそんな大きな声が出たのだろうと思うような大きな声。
でも、誰もその事について驚いたりなんてしない。彼女がどんな思いを抱いていたのかはさっきの告白で誰もが理解したのだから。
だから誰もが思った。
立てよ主人公と。
女の子をこれだけ泣かせて懇願させて、それでいいのかと誰もが思った瞬間。
その声が聞こえた。
「おいおい、ベルさん。舐めちゃいけねぇぜ」
はっと鈴が顔を上げる。
すると、そこにはさっきまで机の上で俯せになって倒れていたはずの葵・トーリが何時もの表情で立っていた。
「俺は最初からそのつもりだぜ」
「……トー、リ君……?」
「おお。そうだぜ。俺、葵・トーリはここにいるぜ」
ようやく───不可能を背負う男が立ち上がった。
さっきまでの落ち込みはどうしたのだと思わず周りは問い詰めたくなったが、ここは我慢だと思い、皆沈黙を選んでいる。
「トーリ、君……」
「おお、そうだよぉ。トーリ君だよぉ」
「あ、のね……」
「ん?」
その後、鈴は何を思ったのか、彼の方に近づき、彼の両手を手に取る。
そんな彼女にトーリは彼女に合わせて膝を着く。
その様子だけ見れば、まるで姫に忠誠を誓う騎士のように思えたのだが……その後にまさか鈴がトーリの両手を自分の胸に持ってきたのは意外だった。
はぅあ! と周りが仰け反るのを無視して二人の空間は時間を進める。
「私、ね……ちゃん、と、大きくなって、るよ……?」
「ああ。衝撃的事実だ」
その事に周りがひそひそ声で思わずその実況を語る。
「あれれ? さっきまで確か物凄いいい雰囲気を吸っていたはずなんですが、何時の間にこんな摩訶不思議空間に転移しているのでしょうか?」
「シッ。確かに一見、騎士の忠誠シーンに見えるようだけど、これから、もしかしてメインヒロインを救うかもしれないっていうルートに進むとは思えないね。僕的感想だと、絶対これ後ろから刺されるパターンだよね」
「くくく。流石は愚弟ね。まさか昨日のミトツダイラの経験をここで持ち出す事で側室フラグを立てるだなんて……BADエンディングには気を付けるのよ!?」
「おいおいおいお前ら! 俺は今、ベルさんとのオパーイ忠誠を立てている所なんだから、邪魔すんなよー。」
そこで周りに梅組の皆がいる事を思い出したのか顔を真っ赤にしてトーリの両手を胸から遠ざける。
その事に解り易い絶望の表情を顔に張り付けて、トーリは懇願する。
「ちょ……! 待ってベルさん! もう少し! もう少しだけ……! もう一度ロードさせてーーー!!」
「お前、最悪だよ!!」
「ああ!? そん
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