小さな意志
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が読んでもいいのかと聞いた。
貴女の思いを私が代わりに告げてもいいのかと。
その問いに鈴は
首を縦に振った。
だから、私もそれ以上、何も言わずに自分の役目を果たそうと思った。
「浅間智───代理に奏上いたします」
それは告白の手紙であった。
───私には好きな人がいます。
ずっと昔からいます、ずっと昔の事でした。
初等部入学の時でした。
私は嫌でした。
教導院に行くのが嫌でした、私のお父さんもお母さんは朝から働いています。
二人は来られませんでした。
私の入学式は一人でした。
お父さんもお母さんも心配するので泣きませんでした。
本当はおめでとうと言って欲しくて、笑って欲しかったです。
教導院には私の嫌いな階段も長くあります。
だから、階段の前で考えました。
おめでとうと言われないなら登らなくて良いかと思っていると、他の人達は私に気づかずお父さんもお母さんと一緒に登っていきます。
私は一人でした。
だけど、私の好きな人達も二人でした。
その二人は私が立っているのを見ると、一緒に行こうと言って、私の手を引っ張ってくれました。
私は覚えています。風の匂い、桜の散る音、気づけば私は一人で階段を登って言いました。
家に帰ってお父さんとお母さんに話をしたら、喜んでおめでとうと言ってくれて、頑張ったねと言ってくれて、私はまた泣きました。
中等部は二階層目で階段がありませんでした。
高等部は階段がありましたがもう一人で登れました。
でもトーリ君は一度だけ入学式の日に手を取ってくれました。
それはかつてホライゾンが取ってくれた左手です。
でもそこにはホライゾンはいませんでした。
誰もが黙って聞いていた。
普段はどんな時でも馬鹿をやっているクラスだが、それでもこういう時に外さないからこそ、誰もがまぁ、良いかと思って、一緒にいるのである。
授業中でも金の計算をしているシロジロとハイディも、小説を書いているネシンバラも、同人誌を書いているナルゼも、さっきまでメスを磨いていた熱田も。
誰も彼もがその告白を黙って聞いていた。
覚悟を決めた女の子の一世一代の告白を誰も絶対に邪魔はしないという意志を持って、この場でただ黙って続きを聞いた。
私には好きな人がいます。
私はトーリ君の事が好き。
ホライゾンの事が好き、皆の事が好き、そしてホライゾンと一緒のトーリ君が一番好き。
だからお願いです。
だからわたしの手を取ってくれたように───
わたしの手を取ってくれたように……
「お願い!ホライゾンを助けて……トーリ君!」
そして叫んだのは代わりに読んで
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