第一章
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怒りの裁き
この時京の都では実に嫌な事件が起こっていた、その事件を聞いて誰もが顔を顰めさせた。
「酷いな」
「足が悪いもの乞いを寄ってたかってか」
「いじめて嬲り殺しか」
「戦の場でもこんなことはないぞ」
「それも元服前の者が徒党を組んでか」
「こんな話ははじめてだ」
誰もがこう言った、そしてだった。
京都所司代を務める板倉勝重に取り調べと沙汰が預けられた、板倉は皺が多い穏やかな顔で周りから話を聞いた。
「そうか、おかみのか」
「直参の家の者達です」
「下手人達は皆そうです」
「どの者も三河代々の譜代の家の者達です」
「そして親もです」
「どの家の親も知っておる」
板倉はその家の名前を取り調べに書かれているものから見て述べた。
「全てな、大御所様のお傍の者ばかりだな」
「はい、そしてです」
「どうもそのことを傘に着てです」
「あの者達は普段から好き放題しており」
「民百姓に狼藉を行い」
「遊郭で銭を踏み倒しです」
「辺りの女を集まって襲い」
「この度はです」
「もの乞いをいじめ殺したのだな」
板倉は落ち着いた声で述べた。
「そうだな」
「左様です」
「普段から立場の弱いものをいじめ喜んでおり」
「商人の家の小さな子を囲んで骨が折れるまで殴り蹴ったりです」
「汚物を食わせていましたが」
「この度はもの乞いをです」
その立場の者をというのだ。
「四条の方にいたのを見付けてです」
「殴り蹴り刀を抜いて刺してです」
「耳や鼻を削ぎです」
「あらん限りのことを行い」
「遂には殺してしまいました」
「わかった、もの乞いの躯を見よう」
板倉は周りの者達の報を聞いたうえで落ち着いて述べた、そして実際にその躯を見て報の通りであることを認め。
次に下手人達から直接話を聞いた、見れば誰もが元服前で前髪立ちであった、しかしどの者も不服そうで悪びれる様子もなかった。
それでだ、板倉にも口々に言った。
「何のことがありますか」
「我等は天下様の家の者ですぞ」
「今や徳川家が天下人です」
「徳川様にお仕えする我等が何をしてもいいではないですか」
「ましてその辺りの民百姓の子なぞものと同じです」
「もの乞いなぞ道の糞も同じではないですか」
「そのもの乞いをいじめて何かありますか」
板倉にも不遜な態度で言うばかりだった。
「それよりも牢から出して頂きたい」
「あの様な場所は窮屈で仕方ありませぬ」
「しかも臭く暗いです」
「あの様な場所には一時もいたくありませぬ」
「だから早く出して下され」
「何なら父上からもお話を聞いて下さい」
親の威光すら出していた、板倉は彼等の話も全て聞いてだった。
じっくりと吟味した、その中で都の者達は話し
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