第六百七十一話 野上君の戻る先その十一
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「餓鬼は嫌いでな」
「殺していますか」
「これからもそうする」
博士は野上君に落ち着いた声で述べた。
「ただ餓鬼界には入られぬ」
「博士は」
「そちらは別の管理人達に止められておる」
「宇宙樹のですね」
「同僚達にな」
その彼等にというのだ。
「そうされておる」
「そうですか」
「だからな」
それでというのだ。
「餓鬼は嫌いでもな」
「餓鬼界には入られないんですね」
「そうじゃ、ただ地獄には行ける」
そちらはというのだ。
「そうな、しかし地獄の亡者達にはじゃ」
「そうしたことはされないですか」
「うむ、亡者は別にじゃ」
「何もされないですか」
「そうしておる」
「そうなんですね」
「亡者はな」
地獄の彼等はというのだ。
「餓鬼の様に浅ましく卑しいかというと」
「違いますか」
「まだな、ただ許せぬ罪を犯した輩ばかりじゃ」
地獄の亡者達はというのだ。
「そればかり行ったな」
「本物の悪人ですね」
「それが落ちる、ただ日本の仏教ではじゃ」
こちらの地獄ではというと。
「主に欲のもので餓鬼道に堕ちる輩でもじゃ」
「地獄に落ちていますか」
「そうじゃ、八大地獄があるが」
そしてそのそれぞれの八つずつ地獄が存在している、合わせて六十四の地獄が存在しているということだ。
「その中にはな」
「そうした連中が落ちる地獄もありますか」
「例えば不倫をしたりいじめをしたりな」
「そうした奴も地獄に落ちて」
「餓鬼道に堕ちるのでなくな」
そうでなくというのだ。
「そっちじゃ」
「日本の仏教は地獄が大きいですか」
「どうもな、それでな」
「餓鬼道は狭いですか」
「そんな気がする、それぞれの宗教で世界が違う」
博士は話した。
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