第二部 1978年
ソ連の長い手
雷鳴止まず その2
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ンテナを機内に回収するとコックピットに乗り込む。
椅子に腰かけて、地上に発進する準備をしている最中に、美久の報告を受けた。
「未確認の機影が多数接近。その数50機ほどです」
通信を聞いたマサキは、思わず歯ぎしりをする。
「恐らく米空軍だ」
事前連絡の有った通り、大規模な絨毯爆撃が開始されるのであろう。
新型の高性能爆薬の威力は、未知数。
余計な損耗を避けるために一刻も、早く脱出するのが得策。
操作卓を右の食指で強く打刻すると、即座に機体は転移された。
マサキは、ミンスクハイヴから西方に30キロほどの位置に移転すると機体を着陸させる。
場所は、ラコフと表示され、リトアニアのビルニュスに向かう街道沿いの村落である事が判った。
態々白ロシア国内に残ったのは、米軍の絨毯爆撃を遠くから見届ける為。
爆撃を一通り終えた後、最後の仕上げとして白ロシアの東半分を廃墟にするためであった。
段々と東の空が明るくなって来ると、深い朝靄が晴れ始め、近くに建物が見えた。
廃墟となったロシア正教の寺院と思しき建物が目に入る。
その様を見ながら、マサキは過去の追憶へ沈潜していた。
ソ連は、マルクスの言う所の『宗教は人民の阿片』という共産主義の原理に基づいて、あらゆる宗教を否定した。
ギリシア正教の流れをくむロシア正教は言うに及ばず、イスラム教、仏教、土着信仰の類まで徹底的に弾圧。
王侯貴族の墓所を暴き、金銀財宝を略奪したばかりではなく、古代から崇拝の対象になっていた権力者や各宗教の聖人の墓所を暴き、屍を弄んだ。
各宗教、宗派から荘園や寺院を暴力で取り上げ、僧侶や神父などの聖職者の大部分は、刑場の露と消えた。
ロシア正教の壮麗な寺院や大伽藍は、食糧倉庫やラジオ局に改造されたのはマシな位で、その多くはゴミ捨て場や共同便所になった。
モスクワの救世主ハリストス大聖堂など、代表的な施設は爆破されて、無残な姿をさらした事を思い起こす。
爆破の指令を出したスターリンは、神学校出の強盗犯であったのは、何という皮肉であろうか……
冴え冴えと朝日が廃墟となったロシア正教寺院に差す様を見ながら、マサキは思う。
何れや、BETA戦に一定の目途が着いた暁には、この世界から共産主義者を滅することを心に誓った。
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