暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
圏内事件〜追跡編〜
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けど……」
SAOで同姓婚は不可能だ。黄金林檎のリーダーが女性だったなら、結婚していたというグリムロックは自動的に男ということになる。
もっとも、それは絞りこむにはあまり使えない情報だ。
なぜならば、SAOプレイヤーの実に八割近くが男性プレイヤーで成り立っているのだから。
「………違う」
不意にキリトの言葉に反応した言葉があった。
その発生源は、ソファの上で大きな体を限界まで丸め、かちゃかちゃという金属音を響かせていたシュミットだった。
「違うって……なにが?」
訊ねたアスナを見やることもなく、シュミットはいっそう深く顔を俯かせながら呻いた。
「違うんだ。あれは……屋根の上にいたローブは、グリムロックじゃない。グリムはあんなに背が高くない。それに………それに………」
続いた言葉は、驚愕の一言だった。
「あのフードつきローブは、GAのリーダーのものだ。彼女は、街に行くときはいつもあんな格好をしていた。そうだ……指輪を売りにいくときだって、あれを着ていたんだ!あれは……さっきのあれは、彼女だ。俺たち全員に復讐に来たんだ。あれはリーダーの幽霊だ」
はは、はははは、と不意にタガが外れたような笑い声を漏らす。
「幽霊ならなんでもアリだ。圏内でPKするくらい楽勝だよな。いっそリーダーにSAOのラスボスを倒してもらえばいいんだ。最初からHPがなきゃ、もう死なないんだから」
はははは、とヒステリックに笑い続けるシュミットの目の前のテーブルに、キリトは左手に握ったままだったものを放り投げた。
ごとん、と鈍い音が響くや、シュミットはぴたりと笑いを止めた。
凶悪に光る刃を数秒見つめ───
「ひっ」
弾かれたように上体を仰け反らせる大男に、キリトは抑えた声で言った。
「幽霊じゃないよ。それは実在するオブジェクトだ。SAOサーバーに書き込まれたただのコードの塊だ。あんたのストレージに入ったままのショートスピアと同じ、な。信じられなきゃ、それも持っていくといい」
「い、いらない!槍も返す!!」
シュミットは絶叫し、ウインドウを開くや、震える指先を何度もミスらせながら操作して、黒いスピアを実体化させた。
窓の上に現れた武器を払い落とすようにして、ダガーの隣に転がす。
そして再び頭を抱えてしまう男に、アスナが穏やかな声をかけた。
「………シュミットさん。私も幽霊なんかじゃないと思うわ。だって、もしアインクラッドに幽霊が出るなら、黄金林檎のリーダーさん一人だけのはずがないもの。今まで死んでしまった三千五百人、みんなが同じくらい無念だったはずだわ。そうでしょう?」
だが、シュミットは項垂れたまま今度も首を左右に動かした。
「あんたらは……彼
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