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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜絶望と悲哀の小夜曲〜
圏内事件〜追跡編〜
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で何とか受け止めたヨルコに顔を移す。

ばしゃっ、という、あまりにもささやかな破砕音。ポリゴンの欠片が、炸裂したブルーの光に吹き散らされるようにして拡散し───

腕の中に、漆黒のダガーだけが残っていた。










レンは、突如心に湧いた感情が何なのか解らなかった。

そしてその感情を理解しないまま、腕の中に残ったダガーを静かに石畳の上に置く。

──と

「野郎っ………!」

不意に上から聞こえてきた叫び声にレンは顔を上げる。

すると、レンとヨルコが落ちてきた窓の窓枠に右足を掛けているキリトが見えた。

「アスナ、後は頼む!!」

叫び、通りを隔てた向かいの建物の屋根へと一気に跳んだ。

キリトがあんなに急いでいる訳は明白だった。恐らく、犯人を目撃したのだろう。

──僕は?

レンは思う。追うべきなのだろうか、と。

「キリトくん、だめよ!」

頭上から切迫したアスナの声が響いた。

制止の理由は明白だ。もしあのスローイングダガーによる攻撃を被弾すれば、即死してしまうかもしれないからだ。

しかし、ここで自分の命を惜しんで、とうとうその姿を現した殺人犯を見逃せというのか?

もともとレンはこの一連の事件には無関係だ。

ここで無意味に命を危険にさらして、何の意味があるのだろうか?

だが──

「意味なんか、いるかっ!」

叫ぶと同時に、レンは、レンの姿がその場からかき消える。

街の屋根が並ぶ上空へと、カタパルトのように飛び出す。上昇から下降へと転じる一瞬の空白に、周囲に目を走らせる。

「いたっ!」

少し離れたところを猛然と走るキリトと、漆黒のフーデッドローブ姿のプレイヤー。

二つの人影は、それぞれのコートの裾をなびかせ、夕暮れの風を切り裂いて屋根から屋根へと跳び移っていく。

──リンゴーン リンゴーン──

その時、マーテンの街全体に大音量の鐘の音が響きわたった。

レンの耳──正確には聴覚野が、午後五時を告げる多重サウンドに大部分占領されている中───

「あっ!」

眼前を遠ざかっていた人影のうちの一つ、フーデッドローブ姿の人影が青い光とともに呆気なく消失した。










「ばかっ、無茶しないでよ!」

消沈したキリトとともに部屋に戻ったレンを出迎えたのは、押し殺したアスナの悲痛な声だった。

憤激と安堵が半分ずつ混ざったような表情で、ふう、と長く息をついて続ける。

「……どうなったの?」

レンとキリトは揃って首を振った。

「だめだ、テレポートで逃げられた。顔も声も、男か女かも判らなかった。まぁ…あれがグリムロックなら、男だろう
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