第25話 正室と側室 前編
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短剣を麗羽に差し出しました。
「何ですの・・・。これは正宗様が持っている物に似ていますわね」
麗羽は訝しい表情で短剣を見ていましたが、私の短剣と気づき疑問の表情を揚羽に向けました。
「はい、これは正宗様の短剣です。正宗様は自分に仕えて、仕えるに値しない人間なら、これで自分を殺してくれと私に仰りました。」
「な、何ですって!正宗様、本当ですの?」
麗羽は私が揚羽に言った内容に驚いているようです。
仕方無かったのです。
揚羽には自分の秘密を話してしまいました。
後には引けなかったのです。
もし、仕官を断られれば、私は揚羽を殺さなければいけませんでした。
「命を賭してまで、私を仕官させたかった理由を袁紹殿はお分かりですか?」
揚羽は麗羽に対し、話を続けました。
「・・・その理由は何ですの?」
麗羽は揚羽に対して、神妙な面持ちで聞きました。
「その前に、そちらの2人にはご退席していただけますか?」
揚羽は猪々子と斗詩に目を向け部屋から出て欲しいと言いました。
猪々子と斗詩は麗羽に視線を向けて、返事を待ちました。
麗羽は揚羽が私達にしか話せない内容を感じたのか、2人に退出を促しまた。
「いいですわ。二人とも街にでも行って、時間を潰してきなさい」
猪々子と斗詩は「助かった」という表情で部屋を出て行きました。
猪々子と斗詩が部屋を退出するのを確認した麗羽は揚羽に話の続きを促しました。
「早くお話しなさい」
「袁紹殿、あなたの為です。正宗様は袁紹殿と安寧に暮らせる世を実現したい。その為には私が必要と仰られていました」
その後、揚羽は麗羽に私の秘密を教えられたことを話しました。
麗羽は揚羽の言葉を黙って聞いていましたが、最後は驚き私の顔を見ました。
「私の為ですの・・・。正宗様の秘密を教え、自分の命を預けてまで・・・。正宗様・・・、この司馬懿はそれ程の人物なのですか?それ以前に信頼できますの?」
麗羽は憑き物がとれたように、いつもの表情でした。
「ああ、揚羽は天下一の軍師だ。そして、将軍としても一流だ。だから、彼女には是が非でも私の右腕に成って欲しかったんだ。彼女に私の秘密を話さなければ、彼女を仕官させることができないと思った。私は将来、死にたくない。でも、麗羽が不幸になるのはもっと嫌だ」
私は俯いて麗羽に自分の気持ちを正直に告げた。
「正宗様・・・。卑怯ですわ・・・。そんなことを言われたら何も言えませんわ・・・」
麗羽は私に近づいてきて、片膝を着き、私の手を握りながら言いました。
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