第五百九話 歌も歌いつつその八
[8]前話 [2]次話
「許せません」
「そうなんだ」
「ですから何時かは」
「そういえば黒鉄家はどなたが継がれるのですか?」
せんだんはこのことを尋ねた。
「一体」
「確か一輝さんはステラさんのお家に入られるんですよね」
このことはごきょうやが言った。
「でしたら王馬さんか珠雫さんとなりますが」
「私は興味がありません」
珠雫の返事はきっぱりしたものだった。
「ですから」
「そうなんですね」
「はい、大兄様となりますが」
「俺にはどうでもいいことだ」
王馬はこう言った。
「あってもなくてもだ」
「お家のことは」
「俺はな、ただ赤座なぞは気にしてもいない」
一切という言葉だった。
「邪魔をすれば切るがな」
「では媚を売ってきたら」
フラノはその場合について尋ねた。
「そうしたことをする人ですね」
「相手にしない」
王馬はまたしても一切という言葉を出した。
「全くな」
「そうですか」
「俺は地位にも権力にも富にも興味はないからな」
「だからですか」
「一切だ」
それこそというのだ。
「そうした媚を売る奴もいないと思うが」
「そうしてきてもですね」
「相手にしない、俺が媚びることもない」
「というか王馬さんが黒鉄家の当主になられることは決まってません?」
たゆねは首を傾げさせて述べた。
「ご長男ですし」
「それがどうかしたか」
「それでもなんですね」
「気に留めたことはない」
一度もというのだ。
「そのことについてな」
「そうなんですね」
「一輝や珠雫が継ぎたければ継げばいいとな」
その様にというのだ。
「考えているが」
「そうですか」
「家には興味はない」
それが王馬の考えだった。
「俺が興味があるのはだ」
「強くなることですね」
「そうだ」
たゆねに強い声で答えた。
「他のことは考えていない」
「こいつ学校には殆ど来てなかったしな」
雄大はこのことを話した。
「ほんま世界各国歩いてな」
「戦っていた」
「そうやったしな」
「何というかストイックですね」
ヒデヨシは焼いた鮎を食べながら言った。
「王馬さんは」
「そうなんだ、兄さんはあくまで自分の強さを高めることを考えていてね」
一輝が答えた。
「それでなんだ」
「いつもなんですね」
「他の世界にいない時は戦場にいて」
そうしてというのだ。
「戦っているんだ」
「つまり常在戦場ですね」
「そうなんだ」
「そうだ、だからどの世界でもな」
王馬はまたヒデヨシに答えた。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ