第二章
[8]前話
「うちの奴と同じだな」
「ハチトとかい?」
「ああ、こいつとな」
肉を買いに来た客に話した。
「同じだな」
「そうだよな」
「いや、日本のハチ公の話を聞いてな」
この犬のとだ、グレーと白の垂れ耳の大きな優しい目の雄犬を見て話した。
「そっくりだって思ってな」
「ハチトって名付けたな」
「最初はゴローって名前だったんだがな」
それでもというのだ。
「親父がな」
「バイクで死んでな」
「ずっとな、待ってるからな」
今は店の前で丸くなって寝ている彼を見て話した。
「だからな」
「それでだよな」
「ああ、親父が帰って来る時間になったら」
その時が来ればというのだ。
「いつもな」
「迎えに行くな」
「そうするからな」
「メキシコの子と同じだな」
「犬はそうした生きものだな、大事にしてもらったらな」
そうしてもらえると、というのだ。
「そのことを忘れないでな」
「一生慕うんだな」
「ああ、そうした生きものだ」
それが犬だというのだ。
「だからな」
「それでだな」
「俺としてはな、親父が可愛がっていたし家族だしな」
だからだというのだ。
「もう五年になるけれどな」
「親父さんが死んでな」
「ずっとハチトと共にいるよ」
「そうするか」
「ああ、ハチトいいな」
その彼を見つつ言った。
「そろそろ時間だけれど行くな、帰ったらご飯やるからな」
「クゥン」
ハチトは彼に応える様に一声鳴いてだった。
そのうえで起き上がって通りの入り口の方に行った、そうしてそこで座って待つのだった。だが待ち人は来ず。
とぼとぼと歩いて店に帰ってきた、その彼にだった。
ザビエルはご飯の肉を出してだ、優しい笑顔で言った。
「たっぷり食えよ」
「クゥン・・・・・・」
ハチトは明らかに気落ちしていた、だが。
ご飯を食べてザビエルに撫でられて尻尾を振った、ザビエルも客もそんな彼をこの上ない優しい笑顔で見ていた。
忠犬は何処にも 完
2022・9・24
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