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忠犬は何処にも
第一章

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                忠犬は何処にも
 メキシココアウィラ州でのことだ。
 サンドラ=クルス白髪の太ったアジア系の顔の老婆は家の犬であるクチュフレート白と焦げ茶色の身体で垂れた耳の大きな身体の彼が家に帰ってきたのを見てだ。
 彼を出迎えて笑顔で言った。
「おかえり」
「クゥン・・・・・・」
 犬は悲し気に鳴いて応えてだった。
 家の中に入って休みだした、家に母そして夫と子供達と共に暮らしている娘のイエセニア黒髪が長く奇麗で丸い目と太い眉と面長の顔に胸が目立つ長身の彼女は母に問うた。
「今日もなのね」
「ええ、炭鉱に行ってね」
「お父さんが帰って来るか」
「待っていたわ」
「そうなのね」
 娘は家の中で丸くなっている彼を見て言った。
「毎日よね」
「ええ、お父さんが炭鉱事故でね」 
 サンドラは写真の中で笑顔でいる夫を見て話した、初老のアジア系の顔をした白い髪と髭の男性である。
「亡くなってからね」
「お父さんがまだ生きていると思って」
「それでね」 
 そのうえでというのだ。
「毎日よ」
「炭鉱まで行って」
 娘は家の近くにあるそちらの方を見て言った。
「そうしてなのね」
「お父さんを待ってね」
「お父さんが帰って来ないで」
「それでよ」
「帰ってきてね」
「あの通りよ、お父さんが捨て犬だったこの子を迎えて」
 そのクチュフレートを見つつ話した。
「そしてね」
「ずっと可愛がっていたから」
「クチュフレートも慕ってね」
「今もなのね」
「お父さんを待ってるの、私達はね」
「ええ、お父さんはもういないけれど」
 それでもとだ、娘は母に話した。
「そのクチュフレートをね」
「もうお父さんはいないけれど」
「お父さんの代わりにね」
「大事にしてあげましょう」
「お父さんを慕う気持ちも受け入れてね」
 こう話してだった。
 二人で彼を優しく撫でた、食事を終えて眠っている彼は悲しそうな顔だったが撫でられると寝ていても尻尾を振った。
 その話を聞いてだ、ボリビアのコチャバンバの通りで肉を売っているホセ=ザビエルバスク系を思わせる顔に黒髪の若い男が悲しそうに言った。
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