第二部 1978年
ソ連の長い手
雷鳴止まず
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もらいたい」
そう言うと、彼は立ち上がる。
立ち竦む美久の手を引いて、ドアを開けると、部屋を後にした。
同じ頃、ウラジオストック要塞では、数時間後に始まるミンスクハイヴ空爆の対策を練っていた。
その場に伝令兵が駆け込んで来る。
「同志大将、一大事に御座います。米海軍第七艦隊が日本海軍と一緒になって、日本海上で軍事演習を開始しました」
ミンスクハイヴ空爆と時を同じくして、日米両国は動く。
サンディエゴを母港にする揚陸指揮艦『ブルーリッジ』の元、多数の空母機動部隊を引き連れて、日本海に展開した。
帝国海軍も旧式ながら、戦艦大和を始めとして数隻の戦艦と重巡洋艦が随伴した。
1961年に相次いだベルリンの政治的緊迫と、1962年のキューバ危機。
核戦争の危機を覚えた米ソは、1963年の『部分的核兵器禁止条約』を皮切りに、対話を通じた軍縮を図った。
それが、世にいう『緊張緩和』である。
本来ならば、軍縮によって帝国海軍は大規模な戦艦の退役を行う予定であった。
建造から30年近くが経つ超弩級戦艦・大和、武蔵。
大東亜戦争を生き延びた同艦は、呉や横須賀と言った鎮守府で静かな余生を過ごす筈であった。
しかし、1973年のBETA地球侵略によって、運命は変わった。
カシュガルハイヴの建設と、それに伴う中ソ両国々民の3割が死ぬ事態に、世界は身構えた。
また帝国も例外ではなく、再び軍事力強化に舵を切る。
永い眠りに就こうとしていた戦艦大和、武蔵や重巡洋艦三隅の近代化改修を行い、戦列に復帰させることにしたのだ。
「どうしたものか。前に進んで東欧に一撃を加えるか、それとも背後の日本野郎に対応するか……」
赤軍参謀総長は、狭い室内を何度も往復しながら考えた。
背後から迫る天のゼオライマーと木原マサキ。
ソ連に対して積年の恨みを晴らさんとする東ドイツをはじめとする東欧諸国。
眼前の日本海上には既に日米両軍が陣取って攻撃を伺うばかり。
この5年に及ぶBETA侵略のせいで、米ソの軍事力均衡は既に虚構の産物に成り代わっていた。
10年来の穀物輸入は、石油危機による資源価格の高騰による差額で得た外貨を失わせ、嘗ての活力は損なわれ始めていた。
脇に居る、副官が告げた。
「恐れながら……当面最大の敵はBETAです。
東ドイツには、シュトラハヴィッツの親書を受け入れたと見せかけて、一旦兵を引き、恩を売れば、あの男の事です。
後ろから我が国を襲う事はありますまい。
むしろ、今は全軍を挙げて、ミンスクのBETAを討つべきです……」
男は一頻り顎を撫でた後、納得したように告げる。
「よし
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