第二部 1978年
ソ連の長い手
雷鳴止まず
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、ホープの箱を取り出すとタバコを咥える。
ふたたびタバコに火を点けて、紫煙を燻らせる。
「ただ、この世界のロケットエンジンがいかに進んでいるとはいえ、打ち上げ準備期間や燃料の問題からそんな短期間で奴等の基地を破壊することは困難であろう」
唖然とする工作員を前に、不敵の笑みを浮かべる。
「そうなって来ると、この俺に頭を下げに来たと言う事か」
マサキは、勢いよく立ち上がる。
「良かろう。この際、俺が露助共に先んじてG元素とやらを盗み出して、それをシベリア中にばら撒いてやる」
一頻り笑った後、再び男の顔を覘く。
「強力な磁場を発生させて、二度と蛮族しか住めぬような土地に変えるのも悪くはあるまい」
「只今お持ち致しました」
美久が持ってきた資料を一瞥した後、胸に刺したボールペンを取り、白紙に文字を書く。
「これをグレイ博士とやらに見せてくれ。俺からの頼みはそれだけだ」
そう言って白紙をファイルの中に挟むと、男に渡した。
CIA工作員の男が部屋から退出した後、奥で座っていた綾峰に声を掛ける。
「おい綾峰!この世界の三菱重工か川崎重工でもいい。とにかく戦術機の研究をしている会社に連絡してくれ」
「木原よ、何故にそんな会社に連絡をするのだ。俺を通して陸軍の技術本部でも良いゾ」
「一か所に限定すれば恐らくKGBに情報を素破抜かれる。それに俺は陸軍内に燻っている親ソ派の連中が怖い」
マサキは親ソ反米派の独断行動を恐れたのだ。
元の世界で、嘗ての世界大戦の際も各国に居た容共親ソの工作員の為に避けられる戦争が避けることが出来ず、一千万単位の人命が失われた事を苦々しく思い起こしていた。
ルーズベルト政権下で辣腕を振るったハリー・ホプキンスやアルジャー・ヒスなどがGRUやNKVDの工作員であったのは公然の事実。
ソ連を生き延びさせた武器貸与法や原爆開発へのソ連側の協力等は、ホプキンスの独壇場だった。
防諜関係の甘い日本にも、KGBの間者が居ないとは言い切れない。
綾峰はひとしきり悩んだ後、引き出しからラミネート加工のされた紙を取り出す。
そして、マサキに渡した
「光菱重工に富嶽重工、河崎の連絡先だ」
日本の主要な国防産業の連絡網だった。
「何がしたいが分からないが、俺の名前を出して電話しろ。取り次いでくれるはずだ」
マサキは、まじまじと電話帳を見る。
「綾峰……」
綾峰は引き出しから、ラッキーストライクを出すと、封緘紙を切り、開ける。
両切りのタバコを机に叩き付けながら、告げる。
「お前の頼みは聞いた。今度は俺の頼みを聞く番ではないのか」
コツコツとタバコを叩き付ける音が響き渡る。
マサキは冷笑を浮かべた後、一言漏らした。
「ミンスクの化け物を消したら、暇を
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