第二部 1978年
ソ連の長い手
雷鳴止まず
[1/4]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
マサキはハバロフスクから遠く離れた西ドイツのハンブルグに転移した。
間もなく始まるB-52『ストラトフォートレス』爆撃機による絨毯爆撃に先立ち、地上のBETA群掃討の連絡を受けたためであった。
昨晩より一睡もしていない彼は、命令を伝達した珠瀬と綾峰に一度抗議する為にわざわざ基地に戻ってきたのだ。
だが基地に戻るなり、彼はCIAの工作員と引き合わされた。
「貴方が木原博士ですね」
背の高いの白人の男が、声を掛ける。
右手にホンブルグを持ち、金縁のレイバンのサングラスをかけ、ブルックスブラザーズの背広姿。
如何にも映画に出てくるような、工作員風の姿格好であった。
マサキは椅子の背もたれに寄り掛かると、気怠そうな顔をして男を見つめる。
大きな欠伸をした後、紫煙を燻らせながら、応じる。
「手短に頼む。俺は昨日から寝ていないんだ」
男はサングラスを取ると、茶色の瞳でマサキの顔を伺った。
「左様ですか。では貴方にこのハイヴ攻略が成就なさった後、米国で我等が研究のお手伝いをしてほしいのです」
たどたどしい日本語で話しかける工作員の方を振り向くと、こう告げた。
「俺は、あの化け物共が持ち込んだ物質がどんなものか、さっぱり分からぬ。
その研究とやらを詳しく教えてくれ」
左手に持ったコーラを一気飲みする。
「実は我々は5年ほど前、ハイヴから特別な物質を発見いたしました。
ロスアラモス研究所のグレイ博士が発見した『G元素』と呼ばれるものです」
『G元素』
1974年、カナダ・サスカチュワン州アサバスカにBETAの着陸ユニットが落着し、核飽和攻撃で殲滅した際、残存物から人類未発見の物質が発見された。
米国のロスアラモス国立研究所のウィリアム・グレイ博士が研究し、それをG元素と名付けた。
重力操作や強力な電磁波の発生など未知の領域の技術の発展の可能性を秘めた物質である。
「ほう。俺に化け物の巣穴を掘り返せと……」
タバコを灰皿に押し付けてもみ消すと、斜め後ろに立つ美久に声を掛ける。
「美久、俺の部屋からファイルを持ってこい。それを此奴らの親玉に暮れてやれ」
野戦服姿の彼女は一礼をすると、部屋から出て行った。
「BETAの不可解な行動から、俺はある推論を立てた。
遠く銀河系の果てから来て、自己増殖を繰り返す化け物……世間はそう見ているが違う」
「奴等の狙いは地球上の資源集め。
カシュガルハイヴでの人民解放軍の調査にも協力したが、大変な量の埋蔵資源が持ち出された形跡がある。
中ソの核爆弾投下作戦失敗から2週間足らずで光線級と言うレーザーを出す化け物を作った所を見ると少なくとも奴等の中継基地は14光日、或いは情報が往復することを考えて7光日の距離にあるとみることが出来る」
胸ポケットより
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ