第80話 怪物、登場
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とはないのですが」
俺の返答に、トリューニヒトの耳がピクリと動いたのを見逃さなかった。コンマ数秒にも満たない、ほんの僅かな空気の流れの変化の後、トリューニヒトは苦笑して握手を解くと、わざとらしく首を捻って顎に手を当てる。
「もしかしたら私の記憶違いだったかもしれないね。何しろ私に会いたいという人が何故か多くて、まったく困ったものだよ。そう、アイランズ君ね。君にもいつか紹介しよう。彼はTボーンステーキが好きらしくてね。実に味にうるさい男なんだ」
「ありがとうございます。ですが小官は牛ステーキももちろん好きですが、どちらかというと豚のソテーの方が好きでして」
「おやおや、その歳で節約志向かい? まだまだ胃袋が強いんだからもっと美食を味わった方がいいと思うよ。歳をとってからだと、それもできなくなるからね」
そういうとトリューニヒトは俺の上腕を二度ばかり叩いた。俺が改めて敬礼すると、奴はにっこりと、年配女性を狂わせそうな笑顔を見せて言った。
「ヴィクトール=ボロディン少佐。君にはこれからも期待しているよ」
人の数が少し減って明るくなった室内で、そう言う奴の口元に見える白い歯が、いかにもとばかりに輝いていた。
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