第80話 怪物、登場
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。その為には政治や他の雑音を排除してあげる必要がある。おそらくヤンほどではないにしても、そういう政治家との距離の取り方や交渉の仕方が彼は得意ではない。だから冬薔薇になるまで中堅以下の地位にしかいられなかったのかもしれないが。
故に俺はここで慣れない挑発行動に打って出る必要があるだろう。たぶん彼も何を言われるかは分かっている。
「それに本当にお答えしてもいいですか? 議事録に残りますよ?」
俺が視線でいいですね?と彼に問うと、申し訳ないといった視線が帰ってくる。それはあくまで視線だけで、表情は全く逆に理不尽な怒りに溢れている。
「……聞かなければなるまい」
「皆さんの不作為を取り戻す手段をどう法的に落とし込むかという方便以外のなにものでもありません。係長補佐。貴方は小官に対し、『三ヵ月間何をしていた』と詰問されたが、それはそのままそっくりお返しする話ではないですか?」
彼自身に罪の一端はあるものの、彼の権限ではどうしようもないところでもある。利権主義の副首相は自分の利益しか考えていないし、ロムスキー氏はあくまで住民代表であって実行機関ではない。最も悪いというか、一番どうしようもないのは、自分が音頭をとってやる仕事とは全く思っていないと言わんばかりにあくびをしているサンフォードだろう。俺の視線がサンフォードに一瞬向かったのを、正対するモンテイユ氏もつられて議長席に視線を向け、小さく下唇を噛んでいる。
本来ならサンフォードが特殊法人の議事指導者として、このタイミングで俺とモンテイユ氏の間を取り持ち、根本的に軍の関与を受け入れるか受け入れないのか、まずこの議事に参加する人間に主議題として問う必要がある。さらに具体的に軍の提案に対して特殊法人側がなすべきことをモンテイユ氏に問わなければならないのに、それすらしない。
空気が読めないのか、それとも分かってて行動しないのか。恐らくは自分の功績や政治生命には全く関係ないことだから、手頃な昼寝の時間とでも思っているというところだろう。エル=ファシルと彼の選挙地盤とは全くかけ離れた場所だ。やりたい奴に任せればそれなりになる……そういう放任主義なのかもしれないが、それならそれで十分だ。
「少佐。貴官は我々に不作為があるというが、我々はあくまでも特別法人であり正式な常設行政組織ではない。まして軍のように自己完結性を有する組織でもない。船を一つとっても星間運輸企業と長期契約しなければ満足に運用することは出来ないのだ」
サンフォードにこの場での指導の意思がないということが分かったのか、モンテイユ氏はプラン2と言わんばかりに、根源論から一気に具体的な方法論へと話を飛ばす。喧嘩腰に討論しつつ、俺と二人で具体案を組み上げようという議論の『即興出来レース』だ。勿論、俺はそれに乗る。
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