第二章
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「いきなり出て来たからな」
「だからなのね」
「事前に連絡しなかった俺も悪いけれどな」
「今日のことは忘れてね」
「ああ、そうするな」
「そうよ、見せたくて見せたのじゃないし」
こう言うのだった。
「いいわね」
「そうするな」
「ジェントルマンでよかったわ」
「そうか、それでスマホだけれどな」
柳生は本題に入った、すぐにそれを苑子に差し出して言った。
「これだろ」
「ええ、それよ」
苑子はその通りだと答えた。
「私のスマホよ」
「受け取ってくれるか」
「そうさせてもらうわ」
柳生の言葉に答えてだった。
苑子は彼の手からスマートフォンを受け取った、そしてまじまじと見て自分のもので間違いないと確認してから彼に言った。
「有り難う、じゃあね」
「ああ、またな」
柳生は去ろうとする、だがここで苑子は彼に問うた。
「それだけ?お礼するけれど」
「スマホ持って来たからか?」
「お料理食べる?晩ご飯ね」
こう言ってきた。
「豚カツと野菜炒めだけれど」
「レディ一人の部屋に彼氏でもないのに入られるか」
「そう言うの?」
「ああ、気持ちだけ受け取っておくな」
「紳士なのね、貴方」
「そうだったらいいな、じゃあまた明日な」
「うん、明日ね」
二人は微笑みを交えさせて別れた、そして。
翌日の朝柳生は苑子に普通に挨拶をして自分の席に着いた、苑子はその彼のところに来て尋ねた。
「昨日のことはいいの」
「スマートフォンのことはか」
「それいいけれど、服の」
「忘れろって言ったな」
柳生は苑子の方を振り向かずに言った。
「だからな」
「忘れたの」
「ああ、この話はなしだ」
「そうなのね。持って来てくれた人があんたでよかったわ」
スマートフォンをとだ、こう言ってだった。
苑子は自分の席に座った、そうして仕事の準備をするのだった。後日柳生は紳士的な対応で社内でも評判になったが苑子はこのことを当然と思った。
薄過ぎるルームウェア 完
2022・9・21
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