第九話 聖バルテルミーの虐殺その十三
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
雪子は席を立ちだ。兄にこう告げた。
「今日はね」
「うん、今日は帰るんだね」
「お家でね。そこでお酒でも飲むわ」
今日はそれで楽しむというのだ。こうした話をしてだ。
雪子は塾の理事長室から出た。そしてそのまま帰路についたのだった。彼女と兄のやり取りは二人だけが知っている筈だった。しかし。
十字が聞いていた。そしてだ。彼は傍らに控える神父に言ったのだった。
「相変わらずだね」
「そうですね。しかもです」
「僕に仕掛けるつもりだね」
「その様です」
「そんなものは何でもないよ」
雪子の邪な計略にはだ。十字は素っ気無く返した。
「そんなものでやられる僕ではないからね」
「そうですね。あの程度では」
「既に知られている時点で計略は破れるものなんだよ」
「その通りです」
「そしてね」
さらにだ。十字は言った。
「彼等のやり取りは聞いたね」
「はい」
その通りだと。神父は十字に静かに答えた。
「確かに」
「そうだね。彼に仕掛けるというのは」
「それが問題ですね」
「動こうかな」
十字は無表情で述べた。
「その際は」
「そうするべきかと。ただ」
「ただ、だね」
「その通りです。彼等の姦計は止められなくともです
「救うことはね」
「それはできます」
神父が告げるのはこのことだった。
「ですから」
「動くべき。ただ」
「残念に思われていますね」
「うん。彼等のことを思うと」
実際似そうだと答える十字だった。
「どうしてもね」
「そう思われて当然ですね」
「そうだね。ただ」
「はい、人に出来ることは限界がありますね」
「人は神じゃないから」
だからだと述べる十字だった。
「こうしたことはね」
「出来ないことがありますね」
「そう。万能であるのは神だけだよ」
あくまでだ。神を言う十字だった。
「だからね。そこはね」
「出来ることをするしかない」
「そうだよ。ではね」
「はい、それでは」
「動くよ」
自分でだ。そうするというのだった。そlしてだ。
十字は今度はだ。神父にこう述べた。
「それでだけれど」
「薬の元ですね」
「うん。そこはどうなるのかな」
「藤会についてはあらかた調べさせてもらいました」
神父は十字の傍らに立ったまま静かに一礼してから述べた。
「そしてです」
「わかったんだね」
「はい、全てです」
その藤会についてだ。わかったというのだ。
「わかりました。そして資料に収めました」
「ファイルかな」
「それにしました」
まさにだ。それに収めたというのだ。
「ではそれを
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ