第九話 聖バルテルミーの虐殺その十
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「それを使う人を破滅させるんだ」
「破滅、ね」
「快楽と共にね」
「そうなのね」
「けれど清原さんは知らないんだね」
雪子自身に気付かれない様にだ。十字は彼女の目を覗き込んだ。
「だったらいいよ」
「そうなの。麻薬ね」
「イタリアにもあるよ」
「本当にあの国でもあるのね」
「この国もそうなんだね」
何気なくを装ってだ。十字は述べた。
「わかったよ。それじゃあね」
「ええ、絵を描いてくのね」
「暫くね。そうするよ」
「わかったわ。それで佐藤君塾も通ってたわね」
清原塾のことをだ。雪子は話してきた。
「清原塾ね」
「うん、通ってるよ」
「凄いじゃない。全教科殆ど満点で塾に入って」
それからもだというのだ。
「それでこの前の塾のテストだけれど」
「もう結果わかったんだ」
「ちょっと職員室で聞いたのよ」
間違っても由人や一郎から聞いたとは言わない雪子だった。このことは隠したのだ。
「佐藤君のテストが凄いって」
「そうだったんだ。職員室で」
「そうなのよ。本当に凄い噂になってるから」
「わかったよ。そのことはね」
「ええ。とにかくね」
雪子は塾のことも話してからだ。そしてだった。
十字にだ。賽後にこう言ったのだった。
「またね」
「遊ぼうっていうのね」
「何か楽しくね」
こうした話をしてだった。雪子は十字の前から姿を消した。十字はその後姿を無言で見送った。その考えはここでもだ。全く見せないのだった。
雪子はだ。塾で一郎に話していた。二人は今理事長室にいる。
そこで自分の左手に注射を打ちながらだ。そして話したのである。
「折角誘ったけれどね」
「向こうは乗らなかったんだ」
「そうなのよ。教会にいるせいだと思うけれど」
こう推察しながらだ。言う雪子だった。
「朴念仁みたいね」
「雪こに誘われても動かないなんて」
「そうなのよ。私が誘ったら」
「誰でもついてくるけれどね」
「誘いに乗らなかった男はいないわ」
これまでそうなったことをだ。雪子は言ったのだった。
「これまではね。ただね」
「ただ?」
「あのお坊さんだけは別ね。腹が立つわね」
「やれやれ。怒ってるね」
「勿論よ。何よあいつ」
忌々しげにだ。言っていく雪子だった。
「許さないから」
「許さない、ね」
「具体的に何をしてやるかは考えてないけれど」
今の時点ではだ。そうだというのだ。
「何時か誘って。そうしてね」
「危険な道を教える」
「そうしてやろうかしら。高潔なお坊さんこそね」
「それじゃあそれを使うんだね」
「悪くないわね」
兄の言葉に
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ