第二部 1978年
ソ連の長い手
恩師 その5
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ルンハルトよ。俺がナイフ使いであることを忘れたか」
太陽の眩しさに一瞬、目が眩んだ隙に噴出跳躍で飛び上がった。
メインカメラを潰そうとして、袈裟掛けを喰らうも済んでの所で避ける。
右側の錣のように盛り上がった部分に当たり、滑り落ちる。
幸い、メインカメラも通信アンテナも影響はなく、深紅の塗装が剥げ、地金が見えただけに止まった。
再びナイフで攻寄るチュボラシカ。
勢い良く跳躍ユニットを吹かし、バラライカの管制ユニット目掛けて突っ込んで来る。
その瞬間、轟音と共に深紅の機体は跳躍した。
泥濘に立てた追加装甲を足場代わりにして、更に跳躍する。
追加装甲が倒れ込むことに、気を取られたチュボラシカ目掛けて飛び降りる。
その際、太刀の握りに左手を添えて八双の構えを取る。
右手の握力を調整し、軽く乗せるようにした後、左手で剣を支える様に持つ。
袈裟掛けで振り下ろす刹那、再び右手の圧力を調整し、強く握りしめる。
地面に着地すると同時に、刀ごと上半身を左側に捻る。
銀色の機体の左肩から、管制ユニットの前面に向かって斜めに切りつけた。
其の儘、力なく銀色の鉄人は、崩れ落ちる様に倒れて行った。
通信装置を通じて、ゲルツィンの断末魔の声が聞こえた瞬間、ユルゲンの戦意は失われた。
深紅の機体は立ち止まると、管制ユニットを開いて、砂地に飛び降りていった。
横倒しになった、チュボラシカの胴体に飛び移る。
国際救難コードを素早く打ち込み、管制ユニットを開く、ユルゲン。
そうして居る合間、突然、奥に居るソ連赤軍の戦術機部隊の副長機が動く。
「ええい、血祭りに上げてやるわ」
そう吐き捨てると、機体の右手を挙げた。
ソ連側の戦術機十数機は、一斉に突撃砲を構え、攻撃の姿勢を見せる。
対岸に居る深緑のF-4Rと迷彩模様のバラライカも突撃砲を構える。
「この数じゃ……」
ヤウク少尉は、思わず唇を強く噛み締めた。
ソ連側の提案を真剣に守って、最低限の武装のみで来た事を今更ながら悔いた。
突撃砲は各機一門。残りの武装は自分が背負っている二振りの長刀のみ。
この距離で敵を牽制しながら攻撃しても、自分の身は守れてもユルゲンが危ない。
重油が撒かれ、地雷が多数埋まる中州に居るのだ……
そうしている内にレーダーに多数の機影が映る。
「僕の運命もここまでか……」
まもなく轟々と響き声をあげた戦術機の群れが近づいて来るのが判った。
左手で右のナイフシースを展開し、逆手に持ち替える。
これで管制ユニットを貫けば、一思いに死ねるだろう……
夢半ばで果てるのは無念だ……
そう思ってナイフを突き立てるのを躊躇って居た時、同輩のヘンペル少尉の機体が目の前に飛び降りて来た。
両手に突撃砲を持ち、腰を低
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