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冥王来訪
第二部 1978年
ソ連の長い手
恩師 その5
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「既にソ連の社会主義は停滞した。その姿は守りに入ったのと一緒だ」
相対する深紅の機体は、盾を、管制ユニットを覆う様に構えた。
「守りの姿勢になった国家など、脅威ではない」

「ほざけ」
その瞬間、チュボラシカが踏み込む。
繰り出した一振りを、深紅のバラライカは刀の腹で払いのける。
鈍い音と共に火花が散る。

 ユルゲンは機体を主脚走行で左側に移動しようとした瞬間、思わず泥濘に足元を掬われた。
網膜投射越しに見ていたヤウク少尉は、思わず声を上げる。
「あっ!」

その刹那、チュボラシカは、噴出跳躍で飛び上がると、八双の構えで切り掛かる。
バラライカは、咄嗟に盾で右肩を覆う様に、構えた。
振り下ろされた一撃は、追加装甲の縁に当たり、火花を散らす。
それと同時に刀の中ごろから折れ曲がり、使い物にならなくなってしまった。

 ユルゲンは、追加装甲の縁を鋼鉄で覆う仕掛けを用いた。
カーボン材は軽量で耐久性が高いも、耐衝撃性が鉄に劣る。
重い長剣をぶつけたら、どうなるか……
幾らカーボン製の刃が焼き付けしてあると言っても、戦術機に搭載する為、軽量化してあるはず。
恐らく中は、中空……。簡単に曲がるはずである。
そう考えて、敢て重量のある鋼鉄で覆ったのだ。


「まさか、盾に仕掛けをしていたとはな……」
への字型に折れ曲がった接近戦闘長刀を遠くへ、放り投げる。
地面にぶつかると、勢い良く火柱が上がり、爆発した。
「足元に仕掛けをする、あなた方が言えた事ではないでしょう」
ゲルツィンはユルゲンの問いを無視すると、操縦桿を捻る。
左腕のナイフシースを展開し、柄を掴むと勢いよく切っ先を深紅のバラライカに向けた。
「そういう事なら、ナイフの方が攻めやすいってことさ」



「別な武器を使うなんて卑怯だぞ!ゲルツィン」
突撃砲を構えようとしたカッツェ機の右腕を、深緑のF-4Rが左手で押さえる。
「待つんだ、カッツェ……。奴等、地面に重油をまき散らしている。
これじゃあ、火器管制システムを使えば、ユルゲンまで火だるまになってしまう」
ヤウク少尉はメインカメラで、周囲を見回す。
「不自然な地面の盛り上がり方からすると、そこら中一杯に地雷が埋まってる。
攻撃ヘリや戦車が支援に来れないように、奴等が仕掛けて来たんだ」

「万事休すか……」
思わずカッツェは機体の操作盤を右手で強く叩いた。
「諦めるのはまだ早い。僕たちはユルゲンを信じよう」
「こんな目の前に居るのに何も出来ないって、それはねえだろう」
興奮したカッツェの顔が、網膜投射越しにヤウク少尉の視界に入って来る。
「兎に角、今は機会を待とうじゃないか」


噴出地表面滑走(サーフェイシング)で太陽が背中に来る位置に移動する。
「ベ
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