第二章
[8]前話
するとだ、彼からすぐに電話が来た。
「君の聞いた通りだ、彼女は脳腫瘍だ」
「そうですか、ですが」
「腫瘍はあった、そしてその娘は危ないから」
「だからですか」
「今私は予定がないし」
志賀は弘田に自分から話した。
「すぐに飛行機でそっちに行くよ」
「仙台まで、ですか」
「そしてね」
そのうえでというのだ。
「手術をしよう」
「すぐにですか」
「うん、さもないと命に関わるからね」
「すぐに手術にかからないとですか」
「危ないよ、手術の際は助手を頼むよ」
「わかりました」
「詳しい話は後でね」
こう言ってだった。
志賀は有言実行の言葉そのままにだった。
神戸から仙台まで飛行機で来てだった。
そうして朋美の手術にかかった、かなりの大手術だったが無事に終わった、そしてその手術の後でだった。
志賀は弘田に朋美の脳のレントゲン写真のある部分を指差して話した。
「ここがだよ」
「腫瘍ですか」
「わかりにくいね」
志賀は温厚な声で話した。
「それもかなり」
「何度観てもわかりませんでした」
「これはそうはわからないよ」
「そうですか」
「経験が浅いとね」
若い弘田の様にというのだ。
「わからないよ」
「僕も脳外科でレントゲンの知識はありましたが」
「それでもわかることは限られているよ」
「そうですか」
「はっきり言って今の君はルーキーでね」
そう言っていい人間でというのだ。
「わかっていないことが多い、やっぱり経験を積んで」
「そこからですか」
「知っていくものだよ」
「そうですか」
「大学そして研修で学んだだけではね」
医学についてというのだ。
「まだまだだよ」
「足りないですか」
「これはベテランでないと絶対にわからないものだ」
朋美の腫瘍はというのだ。
「本当に、だから君はこれからもだよ」
「経験を積むことですか」
「そうだよ、そうしていけば今回の様なことでもね」
「早く気付けて」
「そしてね」
そのうえでというのだ。
「もっと早く助けられるよ」
「わかりました、ではこれからも」
「経験を積んでいくんだよ」
「そうします、今回はまことに有り難うございます」
弘田は終始穏やかに話す志賀に深々と頭を下げて礼を述べた、そしてこの時のことを忘れずにだった。
医師として勤務を続け医学を学ぶと共に経験も積んでいってだった。
知らなかったことを数多く知っていき成長していった、そして医師も経験が重要だと強く周りにも言うのだった。
経験がものを言った 完
2022・9・18
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