第一章
[2]次話
経験がものを言った
弘田壮夫はこの時自分が受け持っている小学六年生の少女花守朋美の東部のレントゲン写真をそれこそあらゆる撮り方で行った何十枚ものそれを観つつ難しい顔をしていた、背は一七六程ですらりとした長身と面長の顎が目立つ顔に黒い縁の四角い眼鏡に真面目な顔と引き締まった唇と鼻を持っている。髪の毛はショートにしている。
医師免許を修得して八条病院仙台の脳外科勤務になって二年経つ、日々患者のことを第一に親切かつ良心的な診察を心掛けている。
その彼が今朋美の頭のレントゲン写真を深刻な顔で観ていた、それでだった。
年配の看護師が彼に言ってきた。
「花守さんですか」
「はい、症状を聞くとです」
弘田は看護師に深刻な顔で答えた。
「明らかに脳腫瘍ですが」
「それでもですね」
「幾ら写真を観ても」
レントゲンのそれ等をというのだ。
「主要がないんです」
「どう観てもですか」
「はい」
まさにというのだ。
「これが」
「そうですか」
「ご両親も言われています」
朋美もというのだ。
「娘さんの体調がおかしいと」
「それでお聞きするとですね」
「明らかにです」
まさにというのだ。
「脳腫瘍です」
「そうなのですね」
「ですがレントゲンを幾ら。あらゆる角度から観ても」
それでもとだ、弘田は深刻な顔のまま述べた。
「腫瘍がないのです」
「おかしなことに」
「はい、どういうことでしょうか」
「でしたら」
看護師はここまで聞いてだ、看護師は弘田に話した。
「神戸の八条病院の脳外科の責任者の」
「志賀さんですか」
「あの人に観てもらってはどうでしょうね」
「そうですね、あの人は脳外科の権威ですし」
それならとだ、弘田も応えた。
「レントゲン写真を送って」
「そうしてですね」
「観てもらいます、さもないと花守さんがです」
「危ういですね」
「脳腫瘍は命に関わります」
脳の癌である、そう考えると非常に恐ろしい。
「それでは」
「はい、すぐにですね」
「志賀さんにお話しまして」
そうしてというのだ。
「観てもらいます」
「それでは」
「はい、今から」
こう話してだった。
弘田は神戸の志賀武郎初老の小柄な白髪の男である彼に朋美の頭部のレントゲン写真を事前に話したうえで送った。
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