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レーヴァティン
第二百六十話 条約を結びその十五

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「そうした腐った場所なんて何も生み出さないしね」
「悪意ばかりだろうな」
「悪意しかない場所はね」
 それこそというのだ。
「生み出さないからね」
「それでか」
「そう、それでね」
「生きていけなくなってか」
「そのコミュニティに誰も来られなくなって」
 そうなってというのだ。
「ただ腐り果てたヘドロだけがよ」
「残るだけか」
「そうなるのよ」
「腐った餓鬼は何も生み出さないってことか」
 芳直は双葉と桜子の話を聞いて言った。
「つまりは」
「そうなるか」
 幸正が応えた、彼の杯に酒を入れると芳直もそうしてきた。それで二人で一緒に飲んでからまた言った。
「やっぱり」
「そうだよな、もうな」
「それこそな」
「餓鬼になるとな」
「心がな」
「もう何も生み出さない」
「悪意だけだな」
 生み出すとすればというのだ。
「まさに」
「他は生み出さないな」
「誰かの利益になるものは」
「そしてそんな連中は容赦しないでな」
「罰することだな」
 幸正は強い声で述べた。
「そこまで堕ちた奴は」
「ろくでもない悪事をしてな」
「それが明るみに出たらな」
「容赦せず罰して」
「悪事の報いを受けさせるべきだな」
 こう芳直に語った。
「そして死んで餓鬼道に堕ちれば」
「その時はな」
「そうした連中だったから餓鬼になった」
「そのことは頭に入れておくか」
「そうだな、しかし餓鬼道は餓えた餓鬼だけがいてだ」 
 ここで幸正はこうも言った。
「周りは何もない、ヒビ割れた荒地と枯れ木だけでな」
「何もないな」
「そんな世界を連想するが」
「腐り果てた奴は何も生み出さないからだな」
「そのせいだな」
「だからだな」
「餓鬼道には何もない」
 それこそというのだ。
「餓えと渇きだけだ」
「何もなくな」
「何も出て来ないな」
「それが悪意だけで動いたり狂信で暴走した果てか」
「そういうことだな」
「そうだな、餓鬼にはなるものじゃないってことだな」 
 芳直は酒を飲みつつ心からこの言葉を出した。
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