第九話 聖バルテルミーの虐殺その二
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「その為に来たんだ」
「神の務めって」
「神はこの世の全てを統べられ司られているから」
「キリスト教ではそうなってるよね」
「そう。神は全てを司っておられるんだよ」
和典はキリスト教徒ではない。その為十字との話に食い違いがあった。このことは十字も感じ取っていたがそれでもだ。あえて触れず話を続けるのだった。
「それはこの国にも及ぶよ」
「日本にも」
「神は悪を許されない」
こうも言う十字だった。
「そして裁かれるんだよ」
「裁く、ね」
「そうなんだ。ところで」
「ところで?」
「田中君は絵を描くことが速くなりたいんだね」
十字からだ。話題を変えてきた。元に戻してきたのだ。
「そうだね」
「うん、悩んでるんだけれど」
「尚且つ丁寧に描きたいんだね」
「絵は丁寧に描く主義なんだ」
和典はこうも答えた。
「相反するけれど」
「いや、その二つをどう整合していくのかが」
「整合?」
「そう。そうしてレベルを高めていくのだから」
それ故にだとだ。十字はその和典に話していく。
「そう考えていいんだ」
「そうなんだね」
「そう。そしてよかったら」
「よかったら?」
「描いてみてくれるかな」
こう和典に言うのだった。
「よかったらね」
「今実際に」
「そう。まずは描くことからはじまるから」
だからだというのだ。
「そうしてくれるかな」
「そうだね。言うよりはまずね」
「動くことが大事だから」
十字は行動を重視していた。それ故の言葉だった。
「だからね。早速描こうか」
「わかったよ。それじゃあ早速」
「それで描く絵は」
「果物かな」
試験用という意味もあってだ。和典が選んだ絵の題材はそれであった。
「林檎やバナナを描こうかな」
「そう。じゃあそれを持って来るね」
「いや、いいよ。自分で持って来るから」
だからいいとだ。和典は微笑んで十字に言葉を返す。
「そうするからね」
「わかったよ。じゃあね」
「うん、それじゃあ食堂から果物借りてくるから」
「いや、待って」
ここでだ。少し考えてからだ。十字は和典にこう提案してきた。
「果物もいいけれどそれだけじゃなくて」
「果物以外にも?」
「そう。お花も入れたらどうかな」
「お花もなんだ」
「花は華でね」
十字は日本語を使った。イタリア語だけでなく日本語にも元々かなり堪能なのがわかる。
そしてその堪能な日本語からだ。十字は和典に話した。
「絵を飾るものだから」
「それ故にだね」
「そう。果物は花から生まれるものだし」
これは花から実がなることからそうなることだっ
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