第三十二章 寝そべって、組んだ両手を枕に心の星を見上げる
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無意識に働いているためだが、でも現在はその意識を切っている。
お互いの姿だけは見えるようにしているが、地に立っているのか空中に浮いているのかも分からない状態だ。
いや、いつの間にか、しっかりとした地面が足元に現れており、辺りを見れば歪んだ奇妙な建物の数々に囲まれていた。
さらには頭上を、
「よおし。みんな、青空に見えてっかあ?」
見上げれば、綺麗に晴れ渡る青い空。
カズミの言葉に、治奈とアサキは頷いた。
実際には光などなんにもない真っ暗闇だが、三人の脳内では陽光に照らされ光り輝く世界へと変わっていた。
彼女たちは、なにをしているのか?
魔力の目による視界を、みなで調整し、見え方を共有しているのである。
青空に見えるのは、仮想世界の中の日本が昼だからだ。
魔法による小細工で脳内にタイマーセットして、仮想世界の日本と同じ昼夜が訪れるように調整したのだ。
仮想世界は、現実世界と時間が同期しており、つまり現実世界こそが時間の基準だ。
しかしこの通り、この現実世界は昼も夜もない。
ならば、と昼夜に関しては、仮想世界側の日本に合わせることにしたのである。
「雲とか、雨なんかは、どうしようかのう」
「そこまでは余計だろ。実際には降らないんだから」
「ほうじゃね。とりあえずは二十四時間の中で、朝昼晩を回すだけでええね」
共有基準を作るための調整をすっかり二人に任せて、アサキは先ほどから、周囲の建物群をきょろきょろと見回している。
シュヴァルツや至垂がいつ気配を殺し襲ってくるかも分からないから、と警戒していたのだが、いつの間にかそのことそっちのけで、この変な形の建物に心を奪われていた。
低層、高層、様々なビルがあり、みな、倒れないのが不思議なほどに、歪みに歪んでいる。
「なんだか、異空みたいだ……」
建物のねじくれ具合をまじまじと見ていると、本当にそう思う。
「住むこと出来のかな? でも、暮らしにくそうだな」
建物の中は通路が無意味にうねっていて、上か下かも分からないくらいだったし、外観にしても奇抜さ先行が過ぎて、住心地がよいかもなどとても想像出来るものではない。
「異星人の感覚や価値観など分かるはずもないし、もしも地球人が使うことになった場合には有事の際に敵の侵入を退けるため、このようデザインにしたらしいです」
ブロンド髪の少女、ヴァイスが説明する。
「ん。ああ、そうか」
アサキは納得し、小さく頷いた。
「でも結局、異星人はここへはやってこなかったんだ」
「はい。この星系には、微生物、バクテリアの類しか、生命の確認は出来ませんでした」
「そうなんだ。地球に生物がいるって、考えてみれ
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