第三十二章 寝そべって、組んだ両手を枕に心の星を見上げる
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いてしまっていた。
く、
と呻くと、ぼろっ、ぼろっ、左右の頬を、涙が伝い落ちていた。
4
「お前、どうせ今度はウメのこと考えてんだろ」
カズミには、完全に見通されていた。
隠しても意味はないので、こくり、頷いた。
鼻をすすった。
「だ、だって、雲音ちゃんを、救おうと、ウメちゃん、あ、あんなに必死に、頑張っていたのに。わたしたちをヴァイスタにしてでも、と苦悩しながら、が、頑張っていたのに……」
アサキはそこまでいうと、俯いたまま黙ってしまう。
時折、鼻をすすっていたが、やがて、顔を上げた。
ぱしっ、
両手で、自分の頬を叩いた。
「ごめんね。ここで、こんなこと。頑張っているというなら、誰もが頑張っている。ヴァイスちゃんだって宇宙のために、こんな、無限にも等しい時間を、ずうっと生きてきたんだ」
「宇宙のために、だけ肯定します。わたしは、いわゆる生体ロボットで退屈という感覚はないため、無限の時間に対して苦痛はないのです」
「それでも感謝だ」
本心から、思う。
遥か昔の人類が、宇宙延命のために思案、実行した、その仮想世界があればこそ、わたしたちも生まれたのだから。
こうして、真実を知ることが出来たのだから。
宇宙を守るための機会を与えて貰うことが出来たのだから。
アサキの言葉の流れを受けて、今度はヴァイスが語り出す。
「確かにわたしは、無限に等しい時間を生き、ずっと待ち続けました。仮想世界内の歴史が進行し、人類に新たな叡智が授かることを。……そしていつしか、奇跡の起こる仮想世界を、願うようになっていた。宇宙の法則を覆す、知識と、力、さらにはその奇跡が、仮想世界に生まれ、よじり合わさって現実世界にも本当の奇跡が起こることを。……それが今回の『魔法のある仮想世界』ではないかと、かなり期待しているのです」
「まず、一つの奇跡は起きた、ってわけだな」
カズミの言葉に、ブロンド髪の少女は幼い顔を縦に小さく振った。
「その通りです。アサキさんという、桁どころかそもそもの規格が違う、絶大な力を持つ魔法使いが仮想世界に生まれ、転写機により陽子構造式そのままに現実世界へと転造された。奇跡の始まりが、始まった瞬間です」
「まあ、アサキはほんっと規格外だからな。……でも、いまさらだけどさ、自分たちがコンピュータのデータだったなんて、複雑な気持ちだよな……」
カズミはこれまで、どちらかといえば楽観的な発言や態度ばかりが目立っていたが、不安な態度をはっきりと見せないだけで思い気持ちはじわじわと蓄積されていたのだろう。
目にじんわり浮かんだ涙は、きっとそういうことなのだ。
そんな彼女へと、
「現実
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