第三十二章 寝そべって、組んだ両手を枕に心の星を見上げる
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痛みを感じる、身体や、心を、作ったんでしょ? 怖いものを怖いと感じる、心を作ったんでしょ? なら、生きているんだよ。……殴られれば痛いんだ。悲しい目にあえば涙が出るんだ。辛い思いなんか、したくないんだよ。悲しい思いなんか、したくないんだよ。人を信じて、繋がって、笑って、恋愛して、普通に、生きたいんだ! 生きてきたんだ! 偽物なんかじゃない!」
声を裏返し、叫んでいた。
知らず熱く語ってしまい、はあはあ息を切らせながらアサキは、驚きにはっと目を見開いた。我に返った途端に、気持ち萎んで弱気な表情。おずおずと申し訳なさそうな上目遣いで、ヴァイスの顔を見た。
「ごめん」
小さく頭を下げると、赤毛がふさり揺れた。
「ヴァイスちゃんにいっても、仕方のないことなのに」
「いえ、こちらこそ謝ります。……わたしは、これまでたくさんの仮想世界を見てきた。でも、わたし自身は、ずっとこんなところにいるから……現実にたくさんの人に囲まれて生きたことなんてないから、あなたたちがどれだけ必死な気持ちであるのかを、本心から理解することは出来ないんだ。本当に、ごめんなさい」
ブロンド髪の少女も、小さく頭を下げた。
「あ、いや、その、いいんだよ。謝らないで。わたしの方こそ、自分の立場からだけでものをいってた。ヴァイスちゃんにも色々とあることを、全然考えもせずに。ごめんね」
そういうと、ようやくアサキは笑みを浮かべた。
激しく泣いた後であり、まだ目が真っ赤に腫れているため、ちょっと変な感じであったが。
「仲直りが出来たのは、まあいいんだけどよ。でも、なにをすりゃあいいんだろうな。あたしたち。この、世界で」
カズミが腕を組んで、ぼそり呟いた。
と、その瞬間、身体が浮き上がっていた。
巨人の手に襟首を摘まれて引っ張られるかのように、突然、垂直に、浮上していた。
カズミだけでなく、四人全員の身体が。
「そろそろ戻りましょう」
白い衣装の少女ヴァイスが、手の中にある小さな機器のスイッチを押したのである。
3
身体が、巨大な手に摘まれ引っ張られているかのように浮き上がっている。
と思った瞬間には、元いた部屋へと戻っていた。
四人の少女たちは、机と寝台だけの簡素な部屋の中に立っていた。
あまりの唐突さに、アサキ、治奈、カズミの三人は、不思議さに口を半開きにして、きょろきょろしてしまう。
「な、なんか、ワープでもした感じだなあ。夢でも見てたような……」
カズミが、自分の手や足、腕を上げて脇腹などを見たり、身体をぽんぽん叩いている。
あまりの高速移動に、身体が削れていないか気にでもなったのか。
実は陽子電送技術でハエが紛れ込んで
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