第三十二章 寝そべって、組んだ両手を枕に心の星を見上げる
[2/14]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
わ、分からなかったからっ。『新しい世界』が発動したら、せ、世界はっ、滅ぶと、あぐっ、い、いわれて、いた、いたしっ。で、でも、でも、無事だった。ほろっ滅んで、なんか、いなかっ、かったっ。フミちゃんも、生きていた。そ、それが、嬉しくて……嬉しくてっ」
すっかり感極まったアサキは、後はただ遥か天を見上げて大声で泣き叫ぶばかりだった。
ボロボロボロボロ、大粒の涙をこぼしながら。
「ほんっと、まったく変わってねえのな、泣き虫ヘタレなところ、全然」
カズミは苦笑しながら、自分の頬を人差し指で掻いた。
「ま、そこがお前のよさだけどな」
ぼそりというカズミであるが、彼女の心にもじんわり込み上げるものがあったのだろう、やはり少し涙目になっていて、ごまかすように軽く鼻をすすった。
2
「無事だったのは、結界に触れたのが超ヴァイスタ化したアサキさんだったからです。そうでなければ、間違いなく世界は滅び、リセットされていた。そういう現実感のもと、運用される世界だったのだから」
淡々と説明するヴァイスの声に、アサキは、真上を向いていた顔を下ろした。まだ涙ボロボロ、えっくひっくとしゃくり上げながら、ヴァイスの顔を見て口を開く。
「わた、わたしには、超ヴァイスタになっている実感なんか、なかったし、いくら話に聞かされていようとも『新しい世界』は『絶対世界』ならば滅びないとか、そんなの本当か分かるはずもないし。だから、不安、だったんだ。でも、でも、フミちゃんの声を聞けて、安心した。……世界は、まだ、みんな、生きて……ひぐっ」
知った者が生きているという歓喜に、泣きじゃくっていたアサキであったが、インターバルを挟むと再び天を見上げて、今度は悲しげな大声で泣き喚き始めた。
わんわんと大声で、文字通りの号泣である。
心から辛く悲しい気持ちが込み上げていたからだ。
仮想世界を現実と信じ、生きている者の生を喜ぶほどに、殺された義理の両親のことが、より以上に現実であると認識されて、思い知らされて、どうしようもなく悲しい気持ちになってしまっていたのだ。
なお号泣を続けるアサキであるが、
「……聞こえとるの? フミ、フミ! ねえ、お姉ちゃんの声、聞こえとる? フミ!」
不審げな治奈の大声に、はっと我に返っていた。
必死に叫び、妹を呼び続ける友の姿。その態度の理由に、すぐに気が付いた。妹の、史奈の声が、聞こえなくなっていたのだ。
「フミ! フミ! 聞こえておるなら返事をして!」
いくら治奈が大声で呼び掛けようとも、もう彼女たちの頭の中に史奈の声が届くことはなかった。
それどころか、ガジャアと不快な雑音さえ聞こえ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ