第123話『夏祭り』
[7/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「え、また!」
「ここっ!」
「全部当たってる!」
そして時間をかけて晴登が打った3発の弾は、3種類のお菓子の箱をそれぞれ落とすことに成功した。優菜の反応に小気味良いものを感じる。
大地はぬいぐるみ狙いで爆死したので、これだけでも晴登の勝利は確定だ。
「くぅ〜お前の勝ちだ、晴登。あんなに小さい的に3発とも当てるなんてよ。射的得意だったのか?」
「あ〜たまたまだよ」
「たまたまって……。林間学校の時といい、お前は何かと運が良いな」
「う……そ、そうかも」
「ふ、不思議ですね〜」
どれもこれも全部魔術のせいである、とは言えないまま言葉を濁す。しかし優菜は真相を知っているので、晴登と一緒に誤魔化してくれた。
「じゃあ、このお菓子は智乃たちにあげるかな。ちょうど3つあるし」
「智乃ちゃんたちなら、この通りの先にいたぞ」
「サンキュ。結月、もう行くよ……ってあれ、どうしたの?」
金魚すくいの屋台に戻ると、しょんぼりと項垂れた結月がいた。まさか運動神経も動体視力も良い結月が失敗したとは考えにくいが……。
「なんかね、結月ちゃんの所には金魚が寄ってこなかったのよ。移動してもそこから逃げるし、明確に結月ちゃんを避けてたの。そんなことある?」
「まぁ……実際にあったんならあるんじゃない?」
「でもでも! こーんなに結月ちゃんは可愛いのに、金魚からしたら怖いのかな?」
「金魚からしたら可愛いは関係ないと思うけど──」
莉奈の謎理論にツッコんでいると、晴登の脳裏にある一つの可能性がよぎる。
「金魚からしたら怖い」ってまさか。でもこの説はさすがに……いや、弱い生き物であるからこそ、より本能に従いやすいだろう。『食物連鎖の上位の生物から逃げたい』と。
「ハルト〜どうしよ〜」
「……結月、諦めよう。これはたぶん、そういう体質なんだよ」
「そんなぁ〜」
はぐらかしたが、大体同じことだ。結月の中の『鬼』に金魚が反応して逃げたとしか考えられなかった。それならば対策はもう存在しない。
結局、大地が取った分が結月に渡ったのだった。
*
あの後無事に智乃たちにお菓子を渡し(なぜか智乃には拒否された)、買い物も遊びも程々に終えた一行は、花火の時間になると見晴らしの良い絶好のポイントへと移動していた。
ちなみに、この場所はあらかじめ風香に聞いていたものである。ナイス師匠。
「花火だ!」
「綺麗……!」
夜空に光の軌跡を描く花火が次々と打ち上げられる。
林間学校で見たばかりだが、夏祭りで見る花火というのは雰囲気からしてまた違う美しさがあった。右隣で結月が感嘆の声
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ