第123話『夏祭り』
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「悪いが俺が先攻でいいか?」
「いいよ」
あのぬいぐるみを先に落とした方が有利なので、先攻を取られることは本来痛手なのだが、今回は"ハンデ"として譲ってあげた。
ちなみになぜハンデをあげたかというと、晴登が"晴読"の力を使うからである。
実はこのところ、晴登は毎日"晴読"の訓練を行なっていた。その中で『"晴読"の力を使う時は30秒のクールタイムを設けて5秒のみ』という縛りを己に課しているのだが、この5秒間はペナルティなしで自由に未来を視ることができるくらいには力に慣れてきている。
そんな訳で、大地がぬいぐるみを落とせない未来もとっくに知っていた。だから余裕綽々で先攻を許したのである。
その予知通り、ぬいぐるみを落とすことができなかった大地ががっくりと肩を落として、晴登と順番を替わる。
「狙いは良かったはずなんだけどなぁ……」
「まぁ全発命中してたしね。単純に威力が足りないからでしょ」
「ちぇ、かっこいいところ見せたかったんだけどなぁ」
「はは。じゃあ次は俺の番ね」
拗ねる大地の隣で銃を構え、晴登はまたも"晴読"を発動。すると銃口から景品が陳列されている棚に向かって一筋の風が伸びていった。もちろん、これは晴登にしか見えない。
ここで説明を挟むと、"晴読"は今のところ2つの力に分けられる。名前を付けるならば、それぞれ"風見"と"風の導き"だ。
前提として、物の動きや人の行動には"風の流れ"が伴う。これを視覚化することができるのが"風見"であり、この流れを見ることで直感的な予知を行なうことができるのだ。
一方、"風の導き"は"風見"の延長線上のようなもので、風の流れに乗った場合に起こり得る未来を脳内に映し出すことができる。この未来を選別することによって、自分が行なうべき最適解な行動が自然と導き出される訳だ。これは自分以外の風の流れにも当てはまり、大地の未来も"風の導き"で視たことになる。
ちなみに、"晴読"という名前なのに、なぜか"風"にちなんだ力になっているのは、恐らく"小風"と混ざったからだろうと父さんは言っていた。不思議だが、これに関しては深く考えない方がいいだろう。
「ふぅ……」
晴登は引き金に指をかけた。その目は照準を見ていない。見ているのは"風見"によって視覚化した、銃口のコルク弾から流れる風である。その風の行き着く先を景品に合わせることで、照準よりも遥かに信頼度が高く、確実に命中し、そして景品を落とす未来に繋がるのだ。
これがズルの正体。卑怯だという自覚はあるが、この対決はあくまで遊び。"晴読"の練習も兼ねているから、これくらいは許して欲しい。
「ここ!」
「当たった!」
「ここ!」
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