第123話『夏祭り』
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1階に降りると、智乃が言った通り大地と優菜が玄関で待っていた。
「戸部さ……いや、優菜ちゃん」
「まだそう呼んでくれるんですか。優しいですね、晴登君は」
前に見た時よりも明らかに表情が暗い。それに少しやつれただろうか。健康そうだった肌に翳りが見える。その原因に心当たりがあるために、少し申し訳ない気持ちになる。そして同時に、彼女がここに来た理由が『晴登たちと夏祭りに一緒に行くため』だけではないことはわかっていた。
予想通り、彼女は深呼吸をすると、晴登と結月の目を交互に見てから口を開いた。
「今日ここに来たのは他でもなく、この前のことを謝りに来ました。晴登君にも結月ちゃんにも、私は酷いことをしてしまいました。ごめんなさい」
優菜は深々と頭を下げる。まさか家に来て最初にやることが謝罪だとは、さすがに予想していなかった。
だが彼女がやったことを考えればそれは必然だろう。喧嘩して別れた手前、いずれはこうして話せる機会が欲しいと思っていたところだ。ちょうどいい。そう思っていると、
「俺からも謝りたい。あの計画は俺も一緒になって考えたんだ。晴登のことも結月ちゃんのことも大事だけど、俺は自分の気持ちを優先したんだ。俺にも責任はある。ごめんな」
「え、大地も?! そうだったんだ……」
なんと優菜だけではなく、続けて大地までも謝罪してきた。まさか、この騒動に大地が一枚噛んでいたというのにはさすがに驚いたが、そう考えると大地がやけに優菜をグループに引き込もうとしていた理由も納得がいく。全ては晴登と優菜をくっつけるために仕組まれていたのだ。
そういうことだったら先に教えて欲しかった……と言いたいところだが、今回の場合はそういう訳にもいかなかったのだろう。やり方は間違えたかもしれないが、彼女らにも事情があり、一概に非難することはできないのだ。
2人は友達で、これからも仲良くしていきたい。だから、
「うん、わかった。謝ってくれたし、俺は許すよ。結月は?」
晴登は優菜と大地の謝罪を受け入れた。
しかし、優菜が傷つけてしまったのは晴登だけでなく、結月もである。彼女からの許しがなければ、本当に許されたとは言い難い。
「……ボクもいいよ。ユウナとはこれからも友達でいたいもん。こんなことで離れたくない」
「……っ!」
そして結月の答えも聞き、優菜は張っていた緊張が解けて、目からボロボロと涙を零した。
「ありがとうございます……! ありがとう、ございます……!」
嗚咽しながら、そう何度も繰り返す。
彼女がやったことは褒められたことではないし、関係を切られても文句は言えない立場だっただろう。それでも意を決して謝ってく
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