第123話『夏祭り』
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は、話をそらすべく夏祭りの話題を持ち出す。すると結月の目がキラリと光り、すっかり興味がそちらに向いた。
そういえば、この町では毎年それなりの規模の夏祭りが開催されている。晴登が幼い頃は遊びに行ったりもしたが、今やもう家から締めの花火を眺めるくらいしかしていない。
「やけにテンション高いね、結月」
「ボク、この世界のお祭りをずっと楽しみにしてたんだよ!」
「あ〜そういえば……」
結月にとって、異世界ならまだしもこの世界のお祭りに参加する機会はまだなかった。強いて言えば『魔導祭』はお祭りだが、そんな屁理屈は置いておこう。
「楽しみだね、ハルト!」
「そうだね」
いつもは家から花火を眺めるだけだったが、結月のために今年は行ってみることにしよう。
*
そうやって結月と夏祭りに行く約束を交わし、いざ当日。夏祭りデートとか定番だし、てっきり2人で行く……と思っていたのだが。
「私がいて残念って顔してる。後で大地も来るし、いつメンだよ晴登」
心の中を読んだかのようにそう言ってくるのは、晴登の部屋で漫画を読みながら寝そべっている莉奈である。相変わらず我が物顔で部屋に居座る癖はいつ治るのか。幼なじみだけどさ。
「楽しみだねリナ!」
「ねー!」
実は今日の夏祭りでは、莉奈と大地も同行することになったのだ。
というのも、結月にとって夏祭りはデートしたいというより、純粋に楽しみたいという側面が強かったらしい。だから自分から莉奈や大地を誘っていたのだ。別にそれでも良いのだが……うん、良いのだが。
加えて、今1階には智乃の友達が2人やって来ている。
これは晴登が智乃に夏祭りの話をしたところ、彼女も行きたいと駄々をこねたので、ついでに彼女の友達も含めて晴登が引率役として連れて行くことになったのだ。手がかかる妹である。
「まぁ、人数が多い方が楽しいか」
望んでいない事態だとしても、前向きに捉えることで自然と気分が良くなるというもの。切り替えていこう。
──その時、家のチャイムが鳴る。タイミング的に、大地がやって来たんだろう。
「お兄ちゃん、大地君と優菜ちゃんが来たよ」
「「──っ!!」」
その名前を聞いて、晴登と結月の動きがピタリと止まる。てっきり大地だけかと思っていたが、2人にとって因縁の相手が一緒だという。
「あ、優菜ちゃんも来たんだ!」
「お、俺出てくる。莉奈は部屋にいて」
「ボクも行くよ」
「ん? りょ〜かい〜」
この状況の深刻さを理解していない莉奈はとりあえず部屋に残し、晴登と結月が迎えることにする。できれば、大地も引き剥がしたいところだが……。
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