第二部 1978年
ソ連の長い手
恩師 その4
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
いか……」
こぶしを握り締めて、力強く励ました。
「ここは、一思いにケリを付けるべきだ」
相槌を打つかのように、大臣は振り返った。
「是非とも、君の力の限りを尽くしてくれ」
奥で立っている参謀総長から、大臣へ縦長の箱の様な物が手渡される。
大臣は、それを高く掲げて、ユルゲンの前に差し出す。
「これは議長からお預かりした剣だ。
これを奉じてゲルツィン大佐の暴走を抑え、駐留ソ連軍を牽制して欲しい」
ユルゲンが受け取った、紫のベルベットに包まれた物。
それは、指揮官の証である、軍刀と拳銃の一式であった。
ユルゲンは、首を垂れると、宝剣と一揃いの箱を恭しく受け取る。
威儀を正すと、国防大臣に返答した。
「軍人たるもの一旦引き受けた以上、死を賭して使命を果たす所存です」
太くごつごつとした男の両手が、ユルゲンの掌を包む様に触れた。
「否、軽々しく死などと、口にするものではない……。
必ず、必ず、我等の元に戻ってきて、吉報を告げて欲しい」
ユルゲンは、大臣の差し出した手を握りしめ、感激に胸を震わせた。
目を瞑ると、深々と頭を下げた。
「お言葉、胸に畳んでおきます……」
それから、その場にいる重臣達に一礼をして、仲間たちと会議場を後にした。
ユルゲンは自宅に帰らず、基地に泊まって明日の準備をすることにした。
強化装備から戦術機の不具合個所の確認と、追加装甲の装備をする為である。
追加装甲とはいっても、人間に相当すると手持ちの持盾に当たるもの。
特殊な耐熱対弾複合装甲材で形成され、対レーザー蒸散塗膜加工が施されている。
速度を上げて敵中を突破する光線級吶喊の戦法を取る東独軍では、あまり好まれなかった。
重く、嵩張る盾は、高い機動力を活かしての攻撃回避を主とする戦術機の運用に影響するとして忌避される傾向にあったのも事実。
刀折れ矢尽きた時、最後の方策として、打撃用の武具にはなったが、それに頼るときは既に戦場で孤立した時が多かった。
「これの縁に、鋼鉄製の装甲板を追加してくれ」
「今から人をかければ、明日の正午までならば……」
「いや、明日の早朝までに……」
ユルゲンが、整備兵相手に熱弁を振るっていると、年老いた男が奥から出て来る。
男は白い整備服に、眼帯姿で頭を丸坊主にし、胸まで届くような白いあごひげを蓄えていた。
その人物は、整備主任である、オットー・シュトラウス技術中尉。
第二次大戦以来、航空機や戦術機の整備をして来た海千山千の古強者。
「縁を鉄枠で囲むって、聞いた事がねえぜ」
「同志シュトラウス、無理を承知でお願いいたします」
蓄えた顎髭を撫でるシュトラウス技術中尉に、ユルゲンは深々と頭を下げた。
「おめえさんは、戦術
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ