第二部 1978年
ソ連の長い手
恩師 その4
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報戦だ。
シュタージがKGBにコバンザメのように寄り添い、国際社会で赤色テロリズムを支援している可能性。
30数年前の敗戦の時より、ソ連の隷属下に置かれている状況から考えると、疑いのない事実に思える。
前の議長の時など、中東のパレスチナ解放人民戦線の幹部等が、毎年の様にベルリン詣でをしていた事を、昨日のように思い出す。
後進国の政治活動の支援と称して、ザイール辺りから留学生などを呼んでいたが、あれは工作員養成ではなかったのか……
物思いに耽っていると、参謀総長がいる会議室の前に着く。
ハイゼンベルク少尉の傍から離れて、室内に入った。
ドアを閉めると、掛け声がかかる。
「総員傾注!」
姿勢を正すと、全員で参謀総長に敬礼をする。
その場には、国防大臣、情報部長、ハイム少将、その他数人の将校が顔を揃えていた。
彼等の姿を認めるなり、ユルゲンは軍帽を脱ぐと脇の下に挟む。
目の前に座る男達に、深々と頭を下げる。
「同志大臣、同志大将……、小官の独断専行をまず謝罪いたします」
会議場にざわめきが広がった。
椅子に腰かけていた国防大臣は立ち上がるなり、右手を上げ、声を上げる。
「諸君、同志ベルンハルトの話を聞こうではないか」
頭を上げるように指示を出す。
「同志ベルンハルトよ……、面を挙げ給え。過ぎたのことは、まず良い。
今回の騒擾事件は……、間違いなくソ連指導部に何かがあった兆候だ」
近寄ると、彼の周囲を歩く。
「ゲルツィンが仕掛けてきたと言う事は、極東に動きがあったのかもしれない。
我等は、そう考えている」
ユルゲンは、国防大臣の言葉にハッとさせられた。
確かにロシアは東西に長い国だ。一度に二正面作戦など無理……
だとすれば、彼等の狙いは、駐留ソ連軍の極東への大規模な移動。
三十数年前の戦争の時も、ソ連はモスクワ防衛の為に、モンゴルから十数個師団を引き抜いた。
後方の安全を確保する為、日本軍の関心を満洲から南方に移させてるように、スパイ工作を実施したほどだ。
仮に日米対策で、BETA戦争で手薄になったシベリアやカムチャツカ半島。
そこに兵力を補充させるのなら、決してありえない話ではない。
世界有数の大艦艇を誇る日米両国に対抗するには、現状のソ連太平洋艦隊では厳しい。
国防大臣は、俯き加減のユルゲンに声を掛ける。
「同志ベルンハルト、ゲルツィン大佐との一戦。もし失態を演ずれば……」
立ち竦む彼の前を、腕を組みながら通り過ぎる。
「今、議長が目指している自主への道は根底から崩れることになり、ソ連の思うがままにされるであろう」
後ろに立っていたヤウクは、右手を差し出すと、食指で天井を指差す。
「ユルゲン。こんな大事な時に臆するなんて、君らしくないじゃな
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