第八話 絞首台のかささぎその三
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「そうしてるの」
「成程ね。そうしてるのね」
「そうなの。お酒とかあとは」
その他にはだった。
「麻薬とか。まあこれは論外だけれど」
「論外、ね」
「最近夜の街で出回っているって聞いてるわ」
噂だ。しかしその噂は真実だった。だが雅はそれがどの様にして出回っていて誰がそれを使っているかは知らない。ましてや雪子がそうだとはだ。夢にも思っていない。
それでだ。こう言うのだった。
「麻薬のことはよく知らないけれどそれでもね」
「それに溺れるのは、なのね」
「そうよ。武道家としてあってはならないわ」
毅然としてだ。雪子に述べたのである。
「絶対にね」
「確かにその通りね」
雪子は仮面を被り善意の者を演じて述べた。
「麻薬に溺れたらね。終わりね」
「武道家として以上に人間として」
そうだというのだ。
「そう思うわ」
「その通りよ。じゃあ本木さんはやっぱり」
どうかと。雪子は雅に囁いていく。
「立派な人ね。だから」
「だから?」
「十階に行くべきね」
そのだ。理事長のいる場所にだというのだ。
「是非共ね」
「是非共なの」
「そう。是非共ね」
こう言ってだ。そうしてだった。
雅はその理事長のいる十階に行くことになった。雪子に案内されてだ。
まずは理事長室に入れてもらえた。そこでだ。
まずは挨拶をした。そして理事長を見るとだ。
由人はその黒檀の豪奢な席に座っていた。塾に飾られている写真そのままの姿がそこにあった。その理事長にだ。雅は頭を下げて挨拶をした。
理事長はその雅にだ。こう言ったのだった。
「まずは座ってくれるか」
「ソファーにですね」
「うん、そこにね」
こう言ったのである。
「遠慮しなくていいから」
優しさを装った声でだ。理事長は雅に話したのである。
「そうしてくれるかな」
「わかりました」
真面目な態度でだ。雅は理事長に応えた。そのうえでそのソファーに座った。その彼女に由人は自分から紅茶を差し出した。ホットレモンティーである。
「どうぞ」
「あっ、すいません」
雅は理事長が自分から紅茶を受けて彼が気さくだと思った。だが。
それが演技であることをだ。雪子の時と同じく気付かなかった。それでだ。
その紅茶を一口飲みそれから。自分の向かい側に座った彼に言ったのである。
「美味しいです」
「気に入ってもらえたかな」
「凄く美味しい紅茶ですね」
「セイロンのものだよ」
そこからのだとだ。由人は鷹揚な笑顔で答えてきた。
「その最上級のものだよ」
「そうなんですか」
「だから美味しいのもね」
それもだというのだ。
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