第10章 アルバレス帝国編
第50話 奇しき赫耀
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た緋色のスサノオは完全に消失し、地面に伏する形となった。ジェラールとウェンディももはや少しの魔力も残っていない様子で、苦しそうに地面に身を預けている。
だが、アイリーンは人間の姿へと戻ったことで、竜の姿で受けたエルザの傷を還元することなく未だ立っていた。
「くっ…竜の時の傷が…」
「傷は連鎖していない…のか…」
エルザとジェラールは、先ほどエルザが真っ二つに近い形でつけたはずの傷が、人間に戻ったアイリーンに見られないことに恐怖滲ませていた。
「はぁ…はぁ…、ダメージはあるわよ…ただ…傷は連鎖…しない…っ!クソガキ共が…てこずらせやがって…」
アイリーンは覚束ない足取りでエルザへと近づき、魔力を込める。そして、その魔力を刀の形にしてエルザの首元へと突きつける。
「くっ…エルザ…」
「エルザさん…ッ!」
ジェラールとウェンディはそれを見て何とか阻止しようと身体を動かすが、それは敵わない。
「終わりよ…エルザ…」
アイリーンは首元へと向けた切っ先をエルザへと更に近づける。そして、エルザの顔を見る。…剣が止まる。いや、止めたのだ。…エルザが小さく微笑したことによって…。アイリーンはそれを見て、400年前の、エルザへと自身の人格を付加させようとしたときのことを思い出す。そう、人格を付加させようとしたその時、自身に笑いかけた赤ん坊の頃のエルザの顔を…。その時の感情を思い出し、アイリーンは震えながら歯ぎしりする。
「笑うなーッ!!!!」
アイリーンはそれをかき消すようにして怒号を放つ。
「まだ…諦めてないぞー!!!!」
「がはっ…」
それを聞き、エルザは最後の力を振り絞ってアイリーンに頭突きをかましてみせる。エルザは再度地面へと伏する。
アイリーンはそれでも、体勢を整えて立ちの姿勢を崩さない。
「まだ、詰めが甘いわね…」
アイリーンは再度魔力によって剣を生成する。…そして、小さく笑いかけると、なんと、自身の心臓にその剣を突き刺した。
アイリーンの行動に、エルザ達は目を見開いて驚愕する。
「情けないわ…帝国最強の女魔導士の私が…自分の娘だけは…殺せないなんて…」
「え…?」
アイリーンの行動と言葉を聞き、エルザは困惑して言葉を短く発した。魔力で生み出した剣が掻き消えると同時に、アイリーンは両膝を地面へと着く。
「な、なぜ…」
「さあ…なぜかしらね…」
エルザの問いに、アイリーンは地面を見つめながら小さく呟く。
「思い出したから…じゃないかしら…」
エルザはアイリーンの言葉に、静かに耳を傾ける。ジェラールとウェンディも、驚きつつも、同じようにしている。
「本当は…あなたを愛していたことを…」
「わ、私を…」
「実はね…あなたに人格の付加ができなかったんじゃないの…しなかったのよ…」
アイリーンの言葉に、エルザ達は
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