第三十三話 夏が近付いてその十三
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「しなかったのよ、というか発想もね」
「なかったのね」
「何もしてなくて」
それでというのだ。
「勝手にね」
「自分を偉いと思っていたのね」
「そうだったのよ」
「それで自分を偉いって思えるの凄いわね」
「まあ長男だからって甘やかされて下地があったらしいけれど」
「長男って言っても」
それでもというのだ。
「誰でもでしょ」
「普通でしょ」
「最初に生まれたら」
男としてというのだ。
「もうね」
「それで、でしょ」
「長男じゃない、どのお家でもいるわよ」
「けれどそれで甘やかされて特別扱いで」
「そこで下地が出来たのね」
「それで尚更悪い人生を送って」
そうしてというのだ。
「そうなったらしいわ」
「そうなのね」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「お父さんもこの人の知ってるから」
「育てていくのね」
「そうよ」
「私もお兄ちゃんも」
「これまでもそうしてきたし」
それにというのだ。
「これからもね」
「そうしてくれるのね、じゃあ私も親になったら」
「この人のこと覚えておくといいわ」
「そうするわね」
「ええ、しかしこの人好かれることはね」
「なかったでしょ」
「わかるでしょ」
好かれるか嫌われるかということはというのだ。
「もうね」
「半分いなかったことにされる位だし」
「親戚のお家でも今日行くで上がり込んでご飯何杯も食べて有り難うも言わないのよ」
「そんなのだとね、しかも文句ばかりだったのよね」
「お世話になってもね、本を貸しても」
例えそうしてもというのだ。
「面白いと言わずにね、貸してくれて有り難うともね」
「文句ばかりね」
「そうだったしね、勝手に人のお部屋上がり込んで本も漁るしで」
「嫌われるわね」
「そうだったわ」
「皆から嫌われて見放されて」
「そんな人生だったのよ」
「しかも自分だけが偉いと思っていてそれって」
留奈は心から思った。
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