第2部
ランシール
巷ではこれをデートと呼ぶ
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一日かけて宣伝に回ったおかげか、屋台の周辺は沢山の人で賑わっていた。他の町の人たちもいることだろう。自分達のしてきたことを思い返し、小さな達成感を味わう。
なにか仕事はないかと、へそにゃんを探すために私はキョロキョロと辺りを見回すが、人が多くなかなか見つからない。
「よっ、お嬢ちゃん! ちょっと見ていかないかい?」
すると突然声をかけられた。振り向くと、屋台の店主が笑顔でこちらを手招きしていた。
店頭に並んでいるのは、フルーツを使ったジャムを瓶詰めにしたものだった。そう言えば、レストランで食べたパンケーキにも、同じ種類のフルーツが乗っていた気がする。
「もしかしてこのジャムに使われてるフルーツって、この町の特産品なんですか?」
私が尋ねると、店主はその通りだと頷いた。
「もともとランシールは農業が盛んでね。とくにこのフルーツは他の町に負けないくらいの品質が自慢さ。この祭りを提案してくださったエドガンさんが、時々我々の仕事を手伝ってくれてたからね、せめてもの恩返しと思って、この祭りに参加することにしたんだ」
なるほど、だから皆このお祭りに協力的なんだ。おそらく私やユウリが地球のへそに行っている間も、エドガンさんはこの町のために農業のお手伝いをしていたのだろう。
「美味しそうですね。一つ頂いてもいいですか?」
私は目の前にあるジャムの瓶を手に取ると、お財布からお金を取り出し店主に渡した。
「毎度! またよろしくな」
店主からジャムを購入すると、私は鞄にそれを入れた。そして今ごろになって、ユウリがそんなに甘いものが好きではないことに気づいた。
露店を歩き回っている間に、広場の中央がなんだか騒がしくなってきた。どうやらユウリが登場するらしい。
「お待たせしました! これより地球のへそ初の到達者である、勇者様の登場です!」
エドガンさんの大々的な紹介に、歓声が響く。そしてまもなく人だかりの中央に、見慣れた格好の勇者が現れた。
「こちらの方が、地球のへその証を手に入れた、ユウリさんです!! 彼はかの英雄オルテガの息子さんであり、魔王を倒すために旅をしています。そんな中、魔王に対抗する力をつけるため、我々が長年守り続けてきた冒険者の修行場、通称『地球のへそ』に挑戦し、見事最奥部にある証を手に入れることが出来たのです!!」
エドガンさんの説明が終わると、ユウリは懐からブルーオーブを取り出した。その途端、今までにない歓声が沸き起こる。
その神秘的な輝きは、オーブを知らない一般人でもとてつもない力を秘めてるのではないかと思わせるくらいの魅力を放っていた。
「それでは、この証を入手した経緯について、ユウリさんにお伺いしたいと思います。ユウリさん、どうぞ!」
誰からともなく拍手が鳴る中、それまで黙していたユウリが口を開
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