第2部
ランシール
巷ではこれをデートと呼ぶ
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くさそうに答える彼が心なしか嬉しそうに見えて、こっちまで同じ気持ちになる。
「それじゃあ、冷めるのももったいないし、早速食べよっか。いただきまーす」
せっかくユウリが頼んでくれたんだ。しっかり味わわなければ。
私はナイフとフォークを使ってベーコンを切り分け、口の中に放り込んだ。
「…………っ!!」
これは……!
口に入れた瞬間、声にならない叫びをあげる。
「どうした?」
その様子がただ事ではないと感じたのか、ユウリが眉根を寄せる。
「すっっっごくおいしい!!」
「……」
この感動を言葉にできるほどの語彙が思い浮かばず、身悶えする私。
対して向かいには、私の紛らわしい言動に白い目を向けるユウリ。
「いいからおとなしく食え」
「……ごめんなさい」
少し怒り気味にそう言い放つと、彼は止まっていた手を動かし始めたのだった。
「おかえりなさい、お二人とも!」
私たちがユウリのルーラでランシールに戻ってきた頃には、すっかり夜になっていた。
町の入口付近は家々の明かりすらほとんど点いてなかったのに、神殿の方に近づくにつれ、松明やランプの炎が辺りを明るく照らしている。普通夜ともなれば皆寝静まっているのだが、今日のこの町は人々の喧騒が絶えない賑やかさに満ちていた。
そんな中、神殿の入口で私たちを出迎えてくれたのはエドガンさんだった。
「あれ? へそにゃんはどうしたんですか?」
「ああ、あいつなら先に祭りの会場で忙しくしていますよ。それより、そろそろ時間ですのでユウリさん、準備していただいてもよろしいですか?」
そう言うと、エドガンさんはユウリの旅装束と装備品一式を渡した。
「服は綺麗にしておきました。さすがにその格好で冒険者と言われても説得力がないでしょう。まずは着替えてきてくれませんか?」
「わかった」
「ミオさんの武闘着も修繕させていただきました。ミオさんが寝ていた部屋に置いてありますので、祭りが終わったあとにでも確認してください」
「わざわざすみません。ありがとうございます」
そんなわけで、一足先にユウリは着替えるために神殿の中へと入っていった。
その間私はどうしよう。せっかくだから町の様子でも見に行こうかな。
「あの、へそにゃんのお手伝いしに行ってもいいですか?」
「それは助かります。あいつなら町の広場にいますよ」
エドガンさんに広場の場所を教えてもらい、私は早速へそにゃんのところへと向かった。
「うわあ……すごい……!」
ところが急いで広場へと足を運んだときには、すでに準備は終わっていたようだった。
屋外のあちこちにランタンがかけられており、まるで昼間のように明るい。準備まで時間がなかった割には、参加している屋台が沢山いることに驚いた。
さらに今日
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