暁 〜小説投稿サイト〜
終局の続き
(壱)長い夜
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『俺が?・・・・チェスの相手はしてるだろ?』



『もう、チェスのお相手じゃないってばあ!』



『126戦やって126連敗・・・・少しは手加減してくれよ・・・』




加持はアスカの自負心をくすぐる




『ふふっ、だって加持さん弱いんだもの☆』



『チェスじゃアスカにかなわないからな・・・・将棋だったらいいぞ?』



『今日はパス・・・・まだ加持さんに勝つ方法が見つかってないんだもん☆』





アスカはチェスの世界では『ein brachliegendes schoenes Maedchen.(眠っている美少女)』の異名で知られた存在である。


アスカ9才の時、勉強の息抜きでたまたまネット対戦した相手を下した事で一躍注目を浴びた


その相手とは、世界チャンピオンよりも強いと言われるチェス専用スーパーコンピューター『DEEP DUEL』であった。



オリンピック出場のオファーもあったが




『ただのゲームに入れ込む程ヒマじゃないわ!』




と、一蹴したという。


周囲の落胆振りは想像に難くない。確かにこの小さな美しき天才を引き込めたら、チェス界がどんなに華やぐだろう。


だがアスカにとって、チェスは加持との余暇を楽しむための、ただの暇つぶしのボードゲームに過ぎなかった




そのアスカが、『将棋』では加持に全く歯が立たない。普通チェスで強ければ、将棋でもある程度強いものである。


加持もアマ三段の腕前であったとはいえ、その程度では相手にならないハズなのだが・・・・




そこにこそ、“アスカ”という人間が端的に表れていた。








『持ち駒を使わないからさ・・・・何故使わないんだ?』








『だってぇ・・・・・捕虜なんて使えるわけないじゃない!いつ裏切られるかわかったもんじゃないわっ!』



『・・・・いくらアスカでも、それは無理ってもんさ・・・それじゃあ、いつまでたっても勝てないぞ・・・』



『勝てるわよっ!!!』





それは無理だった。





将棋は、相手から取った持ち駒を自分の駒として盤上に打ち直すことが出来る為、チェスとは比較にならない無限の変化と選択肢が生まれる。


アスカは自分が持ち駒を使わない事を前提に加持の差し手を読むのだが、歩の交換に応じただけでいきなり劣勢に立たされる



プログラムでチェスの世界チャンピオンは創れても、将棋の名人は創れない。無論アスカもそのことは十分承
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