(壱)長い夜
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それでもこの船旅に同行した理由は、やはり加持にあった
極東の島国から来たというその男は、アスカが物心ついた頃からセカンド・チルドレンのお目付け役として何かと世話をやいてくれていた。
アスカの心の裏側をそれとなく理解し、その強烈な自尊心を受け止めやさしく包み込む事が出来るのは彼だけだった。
彼はいつも飄々として一見軽そうに見えるのだが、加持が傍にいると、不思議とトラブルに巻き込まれる事がなかった。
ごくたまに何か問題が起きたとしても、彼がほんの少し動くだけでまるで何事もなかったかのようになる。
《・・・・アタシ・・・加持さんに守られてる・・・》
そうアスカは実感する。両親の愛情が希薄だった事もあり、アスカは誰よりも加持を信頼し懐いていた。
それに・・・・・・彼は顔が良かった。幼い頃から身近に加持を見て育ってきただけに、他の男はどうしても見劣りしてしまう。
年頃になるに連れて、アスカの中で加持の存在が“保護者”以上の意味を持つようになったのも無理からぬ事だった
となれば、誰にも邪魔されずに加持と長時間ふたりきりでいられるのはまたとないチャンスだった。
・・・・月が・・・・甲板に寝そべる二人を照らしていた・・・・
《今夜こそは・・・・なんとしても加持さんをモノにしなくちゃ・・・・》
日本に着くまでの間に、何とか加持との間に“既成事実”を作ろうと企むおませな碧眼の少女は、まだほんの13才だった
そんなアスカの気持ちを知ってか知らずか、加持はいつもこの小さなレディのアタックをそれとなくかわしていた。
こと女性関係に関しては浮名に暇がない彼だけに、アスカの恋の駆け引きなど児戯に等しかった
・・・・・・それに・・・・・
悲しいかな、アスカは話題を“闘い”に振ると簡単に釣られてしまう・・・・例え相手が愛しき加持であったとしても、勝負事になると目の色が変わる
加持にしてみれば、アスカの追撃をかわす事はネコじゃらしでネコをあしらうようなものだった
『・・・これはこれは・・・お姫様はずいぶん退屈と見えますな・・・・』
『・・・まあね・・・・まぁ、もっとも加持さんがアタシのお相手をしてくれるんだったら、退屈しなくても済むんだけどなぁ♪』
それとなくモーションをかけるアスカ。駆け引きと言うより、直球である。
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