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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第79話 第四一回帰還事業団統括会議
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きを彼はしているのだから。まぁ住居関連の復旧までには至ってないから、企業側も丸損というわけでもないだろう。賄賂の額に見合うかどうかは別として。

「ええ。事実です。地上軍の方々のエル=ファシル星系への奉仕の精神は極めて尊いと小官は考えます」
「その連絡は帰還事業団には届いてない。軍部は我々に報告していないのではないか?」
「統合作戦本部には報告済みなのですが? お聞きになっていらっしゃらなかったのは実に残念です」

 避難施設の運営や官僚としての別の業務と兼務していて忙しいのは承知の上だし、報告自体も『軍事機密』でもあるから取得が難しいのはわかるが、そういうところを見逃しているから俺のようなマヌケにスキを突かれるのだと、挑発的にモンテイユ氏に視線を向けた。氏も自分達の不作為が分かったのか、後ろに座っている恐らく担当の他省庁からの派遣官僚達に厳しい視線を向けている。

「勿論、ハイネセンでの避難生活支援や、避難民の就労、転籍手続きなどで皆様がお忙しいのは、小官も承知しております。故に、今回小官は、第四四高速機動集団の『エル=ファシル奪回作戦』の最終段階として、エル=ファシルへの帰還についての計画を立案した次第です。ご説明申し上げたいので、この部屋の三次元投影装置を使用したいのですが?」

 俺から視線を向けられたサンフォード議長は、隣に座る委員会に事務官に話しかけ、その事務官から伝言ゲームで若い職員の一人が俺に駆け寄ってきて、端末との接続をしてくれた。まだ部屋が明るいため、薄っすらとしか映ってないが、内容表示には間違いがないのでその職員に室内の照明を落とすよう願うと、再び職員は駆けだして事務官に問い合わせている。頷いているから恐らく問題はないだろう。俺は席に腰を下ろしたタイミングで照明が落ちたので、ヤンとザーレシャーク中尉に一言二言告げて、手紙を託した。

「では、ご説明申し上げます」

 背中でゴソゴソと動く気配を他所に、俺は会議室の中央にはっきりと表示された帰還計画について説明する。エル=ファシルまで帰還民を運ぶ船団の船舶調達から始まり、その行程における軍事航路の使用、帰還船団に対する軍燃料の無償貸与、周辺星系の治安状況まで。だいたい三〇分ぐらい喋っただろうか。シーンとした空気の中での発表に、俺は前世の大学での卒論発表を思い出さずにはいられない。照明が戻った後で、俺を見る視線の異様さは全く違うが。

「ぐ、軍はそこまで計画していて、何故、我々に話を通さないのか」
 数分の沈黙の後に、最初にキレたのはシェストフ氏だ。まぁ帰還について一切合切の利権関係は彼が握っているのは分かっている。もしかしたら重工関係だけでなく、星間運輸関連企業にも話をもっていっていたのかもしれない。
「軍の身勝手な態度は目に余る。貴官らは我々をなんだと
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